楽園の執事 Part4

2011 - 02/22 [Tue] - 19:14

あなたの心がきれいだから
なんでもきれいに見えるんだなぁ
―相田みつお





【ウィッシュ=フローラ】

黒い長髪、中性的な容姿の男
非常に強大な魔法使いである

子供のような無邪気さと
大人のような冷静さを併せ持つ


【コーネ=フローラ】

芯が強く、聡明な金髪の女性
ウィッシュとは最愛の間柄

彼女は苦悩している者を
癒すことに幸せを見出す


【ルナリロ】

美しい島の私邸を守る
礼儀正しい壮年期の執事

マナーの悪い者から
美しい自然を守ろうと日々奮闘















「―それで夕焼けが特に綺麗でして

 ほら、都会とかで夕焼けを見ても
 『あぁ、一日の終わりかぁ』くらいにしか
 思わないじゃないですか



 ですがさっき見たのは
 それとは全然違いましたよ

 なんていうんでしょうかね・・・

 全てが一つになっていくような
 不思議な感覚でした」



ルナリロの家で
ディナーをご馳走になりながら
ウィッシュは興奮気味に
執事たちに語る





海に浮かぶ三日月

無数の星が降り注ぐ
涼しげな夜

波の音はいつまでも続く















白い砂は踏まれるたびに
シャリシャリと耳障りの良い音が鳴る

ルナリロが帰ってきた





執事の一人が彼を玄関で迎えると
ルナリロは白い制服についた
砂の汚れを手で払い
ウィッシュとコーネが
食事をする部屋に入った





「長らく待たせましたね」

「あ、お帰りなさい」

「おかえりなさい」



ルナリロは二人の向かいの席に着き
ナイフでステーキを切り始める





「島の遊歩はいかがでした?」

「楽しかったですよ、ほんとうに」

ウィッシュとコーネは
執事たちに話したことを
もう一度ルナリロに話した










魚たちが所狭しと泳ぎ回る海

懐かしい香りのする草原

おもしろい動物でいっぱいの森

生命の鼓動を感じる赤い夕焼け










キレイだった、美しかった

この言葉をどれほど繰り返したことか





ルナリロはそんな二人を見て
ただ満足そうに頷いていた

言葉で伝えられない想いを
分かってくれたことが嬉しかった










会話が途切れたときをみて
コーネが話を切り替える



「あの、さっきの男の子たちは
 どうしましたか?」



ルナリロは口をナプキンで拭いた後に
さもいつものことのように答えた



「機嫌を悪くなさって
 お帰りになられました」



「そうですか・・・
 ケガはありませんよね?」

「ご心配なく
 少しばかり服は傷みましたが」



よく見ると制服の襟元がほつれている
恐らく胸倉を掴まれたのだろう





「・・・自業自得だというのに
 怒られるようなことをしたのが悪い」

ボソッとウィッシュが呟いた





ルナリロは自虐ネタで笑わせるように
自嘲した後ウィッシュを諭す





「いえ、良いのですよ

 あの方たちには
 何を申しても無駄だということが
 分かりましたから」



ゴミを捨てるなと
見ず知らずの人に言うような
行動力を持つルナリロとは
思えないほどそっけない



「え・・・?

 まあそりゃそうでしょうが
 ・・・でも調子にのりませんか?あいつら」



「あまり煩く申し上げると煙たがられます」



食事をする手を止めて
ルナリロは畏まって話し始める





「彼らにとっては
 自然も街も同じようなものです

 ただそこが遊べるか、遊べないか」

ルナリロの目が少し曇る

「私めの見解から申すと
 いかに自分が楽をするかで
 心が一杯なのでしょう



 恥ずかしながら、昔は私めも
 島の美しい自然を見ても
 何も感じませんでした

 物事を否定して悦に酔うあまり
 全てが窮屈に思われたのです



 ですがあるとき
 下らない不満をご主人に申し付けたら
 "お前は物事の良い面を見るべきだ"と
 仰ったことを今でも覚えております



 それからは少しずつ
 心のわだかまりは無くなり
 今では清々しい気持ちで
 毎朝を迎えることができるようになりました」




ウィッシュとコーネ
そして他の執事たちも
仕事や食事を中断して
ルナリロの言葉に耳を傾ける



「よく自然を守ると主張する者は
 身の程を弁えない偽善者だと言われます

 私めはそのような方こそ
 身を弁えない者だと考えます



 なぜなら彼らは
 自然守ることで生まれる利益が
 どれほど貴重なものなのかを
 分かっていないのですから

 それは何も食糧や工業生産のみを
 指すものではありません



 美しい景色を眺めて
 心を休め、精神を癒す

 それだけでも人の役に立つでしょう



 自然を守ることは
 私たち自身を守ることになるのですから
 それは決して偽善ではありません」



「・・・そうですね」
ウィッシュはルナリロの言葉に
感銘を受けながら答える



「俺の立場から言わせてもらいますが・・・
 
 魔法使い一人あたりの
 魔力<エネルギー>なんて
 タカが知れている

 俺たちが自然の理に逆らうような
 強力な魔法を行使できるのは
 莫大な魔力を秘める
 自然の力を借りているからです



 歴史上でも一人の英雄が
 世の中を変えた事例はいくらでもあります

 ですがたった一人で
 奇跡を起こした者など存在しない

 必ず誰かから魔力を分けてもらい
 そこではじめて限界を超えた力を発揮する

 ですから俺たちは
 自然に感謝して生きる必要がありますね



 最近は・・・一人で強くなった気になる人が
 増えたような気がします

 人間が自然の力を借りずに
 頂点まで上り詰めたことを忘れたように、ですね」





険しい顔をしていたルナリロは
にっこりと笑ってみせた

「哲学的なんですね
 魔法使いというものは」

照れるようにウィッシュは笑い、頷いた





改めて姿勢を正し、ルナリロが言う
「お二方にお願いが御座います

 どうかもとの世界に帰ったときに
 この島について皆さんに広めてもらえませんか?」



コーネは迷わずに
「もとからそのつもりですよ」
と答えた

「妹<シルビア>に話したら
 多分飛んでくると思いますよ

 あいつは自然や動物が大好きなんで」
ウィッシュも答える



「そうですか!」

部屋の中にいた
他の執事たちも満面の笑みを見せた

「ありがとうございます」という声が
あちこちから聞こえた










ルナリロたちはたくさんの人に
純粋な気持ちを思い出して欲しいと願って
この島を"守っている"



それは偽善でもなんでもない
ただ単純に多くの人に
この喜びを知ってもらいたいからだ





だがルナリロはどれだけの人と
喜びを分かち合えるだろうか



この二人のようなケースは稀
旅行なんてお金と負担がかかることは
現代では不要なのかもしれない





だからこそ

一人でも多くの人に
この島に来てもらって
言葉や写真で伝えられないものを
誰かに伝えたいのだ




















波はいつまでも静かな調べを奏でる

今日はいい夢がみられそうだ




No title

いつも楽しく読ませて頂いてます♪

心がきれいだから、何でもきれいに見える・・・

「ソウイウヒトニ ワタシハナリタイ」(笑)

若干返信遅れましたがこんばんは(^^


純粋な子供は
道端のタンポポや
アスファルトに生えた雑草ですら
「キレイ」と言います


いつしかピュアな心は忘れ
面倒臭いと連呼して
キレイと言った大人は「デクノボウ」と呼ばれたり(笑)


でもそういう大人は
きっと感受性に優れ
いい作品が創れる
私はそこに憧れます



またいらしてくださいね(^^

(・∀・)

いつもながらおもしろい小説ですね^^
続編・・・´・p・`


P.S
俺のブログは移転することになりました
ブログ移転先→http://mukumikasi.blog41.fc2.com/
小説移転先→http://mukumikasi.web.fc2.com/
なので、このブログとリンクしている『ハクルンの雑多記』を
このブログ移転先に変えてください!
面倒をおかけしてすいませんm(_ _)m

それと、ハンドルネームも
ハクルン→ムクミカシ
に変えます。

では、よろしくお願いします

No title

こんばんは、ムクミカシ様(^^*


続編は今考えている最中ですよ~

まだ自分が納得できる出来ではありませんが
少しずつ書き方が巧くなっていると思います
自分で言うのもなんですが(^^;


リンク訂正しましたので
再度よろしくお願いしますね(^^ノシ

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