animating diva Part2

2011 - 02/28 [Mon] - 22:12

人間は生まれでた瞬間から
死に向かって歩みはじめる

死ぬために生き始める

そして生きるために
食べなくてはならない

なんという矛盾だろう

―池波正太郎





【シルビア=フローラ】
野生の中に生きるワイルドレディ
褐色の肌に長い銀髪が映える

優れた五感や自然の知識はもちろん
生物を手なずける術にも長ける


【ソフィア=フローラ】
クセのあるフローラ家をまとめる母
優しく思慮深いが毒舌な一面も

独特な魔法の形態や思想から
一時期世界中を賑わせた


【ロバート=フローラ】
弱者を救うために戦い続けた男
ソフィアと同格の魔法使い<格闘家>

現在は親バカに目覚めており
フローラ四兄妹に煙たがられている













シルビアは動物が大好き

自然の中で生きられたら
それだけで幸せだ

そんな少女だ















だからあるとき彼女の家族が
平然と魚の塩焼きを食べていたときは
凄まじい形相で怒ったものだった
















春先のその日
シルビアは家族と一緒に
清流に遊びに来ていた





澄み切った川を覗くと
群青色の魚たちが
流れに逆らい泳いでいる

当然シルビアははしゃいで
素手で魚を掴んでは頬ずりした





ほかの家族
父<ロバート>も母<ソフィア>も
兄<ウィッシュ>も弟<ロア>も妹<ステラ>も
全員が各々のやり方で
魚を捕らえて魚篭に入れていた





普段動物の友だちを連れてきても
誰も見向きもしないのに
今日は一体どうしたのだろう?



「ペットにするの!?」

新しい友達が増える
喜びの顔は水面に映り
陽光を煌かせていた



「ぶっぶ~!」

同じく幸せそうな母の顔が
ゆらめく水面に映る



「えぇ~!?
 じゃあ家の近くの海に放すの?」

「ざんね~ん!はずれ!」

「じゃあどうするの?」

「それは、お・た・の・し・み!」





シルビアには魚を食べる

・・・それもスーパーやコンビニで
買ったような魚ではない

さっきまで生きていた魚を
直接調理して食べることが
想像もつかなかったのだろう





ロバートが魚の腹に包丁を入れて
内臓を取り出す様子が
シルビアにとっては
至極残虐な光景だった



大事そうに抱えた魚篭が
ゆっくりと地面に落ちる

飛び出した魚が水を求めてもがく





「なにやってんの!?」
思わずロバートを大声で罵った

驚いて魚を焼く手を止めて
シルビアを振り返る

焚き火を囲む母と兄妹たちも
血走った眼のシルビアを見る





「あ、いや・・・
 悪りぃ!楽しそうに捕ってたから・・・!」

「ちがう、おとうさん!
 なんで魚をきってるの!?」



既に魚を貫いた串が
焚き火の周りに数本刺さってあった

それを見て何とも思わない
優しい家族が悪魔のように思えた



「・・・食うためだろ?」

平然と言葉を返すロバート

「なんで!?どうして!!
 食べたら死んじゃうでしょ!!」

金切り声をあげて
ロバートに詰め寄る
目に涙を浮かばせながら





ソフィアが割って入り
膝を曲げてシルビアの両肩を掴む



「シルビア!」

その眼は明らかに敵意に満ちていた
"命"を奪う者なら母親でも容赦しないと・・・



「・・・おかあさんは、ねぇ!
 命を大切にしなさいって教えたよね!?

 どんな小さな虫にだって
 ワタシたちとおなじ魂が
 宿っているんだよって!」

「えぇ、そうよ」

「じゃあ、どうして!どうして!!
 いま魚を殺しているの!?」



決して怒らず冷静に
いつもと変わらぬ口調でソフィアは答える



「でもシルビア?
 あなただっていつもお魚食べているじゃない

 ・・・ちょっと内臓とか飛び出して
 あんたにはショックだったかもしれないけど・・・」



ソフィアの両腕を振りほどくシルビア



「でも!
 
 まだ生きている魚をきるなんて
 すっごいザンコクだよ!?」

「・・・」



堪えきれない涙が
次々と頬からおちてゆく



ソフィアはシルビアの
両手を柔らかく握る



「・・・食べることは
 ちっとも残酷なことじゃないわ

 魚だってたくさんの生き物を食べている

 教えたよね?
 海や川の中には目に見えないくらい
 小さな生き物がたくさんいて
 そのほとんどが魚に食べられちゃうこと」



「きいたよ!
 でも、"ソレ"は!!
 
 ―"ソレ"は・・・!」



「・・・"それ"は?」



ソフィアはシルビアの答えを待っていた

だがシルビアには
言い返す言葉が見当たらなかった



幼いシルビアはがまんできずに
泣き出してしまった










結局、彼女が捕ってきた魚
―地面で死にそうになっていた魚も
ロバートが捌いて塩焼きにした















「食べるためなら仕方が無いのよ

 だからおかあさんたちは
 いつも言っているでしょ?

 『いただきます』と『ごちそうさま』を
 ちゃんとしなさいって」



「魚は死んじゃったけど、ね?
 あんたが魚の分まで生きてやるのよ」



ソフィアが何度かシルビアを諭したが
その日は家に帰っても
シルビアは一言も話さずに床に就いた

























他にもこんなことがあった





何気なく道を歩いていると
自分と同じくらいの二人の男の子が
蟻を潰して遊んでいた



たまらずシルビアは
無邪気に笑う
その子たちの顔をめがけて
回し蹴りを繰り出した





当然男の子二人は泣き出し
鼻血をだして大騒ぎになった



ソフィアはその子たちの保護者に
何度も頭を下げて謝り
丁寧にその子たちの怪我を魔法で治療した





幸い大したことはなかったが
ソフィアの言うことを無視して
シルビアは絶対に頭を下げなかった










どうしても虫を殺した子たちが
許せなかったらしい

その優しさは褒めてやった



問題はシルビアが過激すぎることだ



あまり怒らないように
しかし厳しくそのことを言ってやっても
シルビアは意地を張ってきかない










あぁ、どうして子どもは
"うん"か"ダメ"のどちらかでなければ
気がすまないのだろうか



たやすく命を奪うような人は許すな
でも命を奪った人にも優しくしなさい

矛盾したこの論理が
大人の世界では暗黙の内にまかり通るのに
それを子どもに教えるのは難しい





「次おなじようなことをアイツらがしたら
 もっと蹴とばしてやる!」と一点張りで
しまいにはソフィアを分からず屋呼ばわりした



堪忍袋の緒が切れた
ソフィアのビンタを受けるシルビア

シルビアはふつうの女の子が泣くように
「えーん!」と声を張り上げて泣いた



「暴力ではなく言葉を使え!
 アンタは人間でしょ!」と
ソフィアは激しく怒鳴った

泣きながらもシルビアは
「蟻を殺しているのに
 言葉もなんもないでしょ!!」と
一言だけ言い返した

























他にもたくさん
このようなことがあった










兄のウィッシュが家の中に入った
蛾を見ては動揺して
すかさず魔法の弾を飛ばして粉々にする

(ウィッシュは母親と同様
 虫がとても苦手だ
 男のクセに!)





それを見たシルビアが
容赦なくウィッシュを蹴り飛ばした

そして家中に響く
泣き声をあげるウィッシュ

頭を抱えて
縮こまった兄に対して
何度も踵落としをきめた





以来ウィッシュは
家の中では何があっても
虫を殺さないようにした

大人になるまで
このトラウマが
消えなかったとか




















弟のロアが牧場で買った
牛乳アイスクリームの
手持ち部分を包んだ紙を捨てる



シルビアは飛び蹴りをかまして
さらに倒れたロアを踏みつけようとした



兄妹のうちケンカが
最も強いロアの場合は
特に厄介だった

泣かずにシルビアの顔面にストレートをおみまい
取っ組み合いの激しい戦いになり
公衆の面前で見苦しい醜態を晒した




















妹のステラに至っては
生き物といっしょに遊ぶと
おねーちゃんからキックされる、と怖がった



家族でアウトドアに出かけたときは
誰よりもシルビアと距離をおいていた

























そんなシルビアも
さすがに年をとるにつれて
蹴りを繰り出すことはなくなった





しかし生き物を平気で殺す人間
自然に何食わぬ顔でゴミを捨てる人間

彼女はそいつらを睨みつけては
時に言い争いになることも珍しくなかった




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