animating diva Part5

2011 - 03/04 [Fri] - 19:17

人間が他の動物よりも
上に立つゆえんは
われわれが冷酷に動物を
苦しめうるからにあらず
彼らを憐れむがゆえなり

―説話



【シルビア=フローラ】
野生の中に生きるワイルドレディ
褐色の肌に長い銀髪が映える

優れた五感や自然の知識はもちろん
生物を手なずける術にも長ける


【ソフィア=フローラ】
クセのあるフローラ家をまとめる母
優しく思慮深いが毒舌な一面も

独特な魔法の形態や思想から
一時期世界中を賑わせた


【ロバート=フローラ】
弱者を救うために戦い続けた男
ソフィアと同格の格闘家<魔法使い>

現在は親バカに目覚めており
フローラ四兄妹に煙たがられている















子どもたちが皆帰ってきているのに
シルビアだけが外に出たっきり帰らない










またいつものように
草原で野宿していると思ったが
どうも違うらしい





朝から食事をするために
一度も家に帰っていないのだ



シルビアの食事は
彼女が頼んだときだけ用意するから
ソフィアはよく知っている





それに電話をかけても返事が無い















「ロバート、なんか電話とかで聞いた?」

(ちなみにこの"電話"は特殊なモノで
 別の世界にいても連絡がとれる)

「いや・・・」

「えぇ・・・!?」

ロバートとソフィア
二人は不穏な気配を感じた





「どこかで倒れていたりしないわよね!?」

「知らねぇ・・・でも、あるかもな・・・」

「・・・ちょっと!
 みんな下に降りてきて!大至急!」



フクロウの鳴き声が
霞がかった月の夜で響く






子どもたちを集めて
全員にシルビアのことを聞いても
誰も彼女の行方を知らない



誰にも告げずに
一人で何処かに行ったのだろう



とはいえシルビアが
瀕死の動物たちをほったらかしにして
どこかにいくはずは無いので
いるとしたら家の近所<この世界>だ










シルビアとすれ違わないように
子どもたちを家に残して
まず一番思い当たる場所に走った



そういえば数日前に
シルビアが獣医から見たこともない
薬を貰って帰ったところを両親は見た

おそらく鎮痛剤か何かだろうが・・・


























膝を抱えて
狼<ゼノース>の住処の前で座る
シルビアを見つけた





息をするたびに肩が上がる

呼吸も落ち着いている

無事で何よりだが・・・









「シルビア!」
走り出すロバート















シルビアは何も言わずに
両親を振り返る



涙が流れた跡が
頬に沢山ある

涙が枯れたように
目の光がない





突如ロバートは足を止める

次に唖然とした表情のロバートを一瞥して
ソフィアが小さな住処の中を覗く

思わず悲鳴をあげそうになったが
ぐっとおさえて声にならないものを発した










周囲には鷹が群がっている
それに腐臭がするのだ



































暫く沈黙は続いたが
立ち尽くしていても仕方がない










「・・・先に帰ってるからな・・・」

「・・・落ち着いてからでいいからね・・・」





両親は黙ってその場から退いた





シルビアは膝を抱えたままで
その場で居続けた



































「姉貴おせぇな
 もう昼メシの時間なのに 
 朝メシすら食ってねぇ」

「おねーちゃんどうしたのかな?
 きのうから様子がヘンだね
 病気なの?」

「姉貴が病気にかかっかよ」

「じゃあなんだろ~?
 学校でイヤなことがあったの?」

「あいつ昨日学校に行ってねぇよ」

「えぇ~!?じゃあなに?
 おねーちゃんヘンすぎるよ?」

「・・・あ、わかるかも
 姉貴があそこまで落ち込むのは―」



「・・・ロア、ステラ!今日暇だろう?
 一緒にスマブラ<テレビゲーム>やんない?」

「ハァ?オレ友だちんちに今から―」

「じゃあその友だちも連れて来いよ!
 さぁ!早速ウォーミングアップだ!
 コントローラー持ってくるように言っとけ!」

「押すなバカ!オメェはカノジョとやってろ!」

「いやぁん!
 おにーちゃんが胸さわった!胸さわったぁ!!」









ストレスが重なると
気が塞ぎこむために
どんな些細なことでさえ
自分を貶めているのだと感じてしまう





あのように楽しそうに
会話していることでさえ
非常に腹立たしく思う















窓から差し込む光はなく
白い壁は蒼く暗い

空を飛び続ける
白い渡り鳥を見ようと外をみると
ただ鉛色の雲だけが広がっていた










シルビアは友の亡骸を目の前にして
意識が遠のいたと思ったら
いつの間にか自室のベッドに仰向けになっていた



あのまま寝入ってしまい
両親に運ばれたのだろう





・・・お腹がすいた

死んでしまった狼<ゼノース>の世話に必死で
数日間まともな食事をしていなかった










リビングルームに入ると
シルビアの分の食事に
ラップがかけられていた



他の家族は既に昼ご飯を食べ終えていたらしい





「おはよう」とソフィアは声をかけたが
シルビアは黙って椅子に座りフォークを持った





テレビもつけず
ソフィアはソファーに座るだけ

皿とフォークがぶつかる音が室内にこだまして
俯いた顔で口を動かす
シルビアの銀髪には艶が無い















「・・・おかあさん」



フォークで肉片を貫いた瞬間
手の動きを止めて口を開いた



ソフィアは膝の上に拳を置きながら
虚空を見つめるシルビアを見る



「動物は幽霊になれないんだっけ」

「・・・そうよ」



「・・・どうして」



「・・・」



「・・・」



会話が途切れたので
フォークで刺さった肉を口に運ぶシルビア










シルビアが食事を済ませ
スープを飲み干した後に
シルビアが話しかける



「人間とちがうから?」



握り締めた拳に力が入る
ソフィアは真剣な目でゆっくりと頷く



「どこが違うってのよ!!

 お兄ちゃんの彼女<コーネ>は幽霊でしょ!

 お兄ちゃんのこと愛していたから
 死んでも幽霊になって
 体を魔法で創って"生きて"いられる!



 でもゼノースは死んでおしまい!
 今ごろ体は鷹に食べられているだろうし!





 『魔法使いとそれ以外の者の違いは
  たかが術を使えるか使えないか
  それだけの違いだ

  どんな生物にも魔力があるから
  術を一つも知らなくても
  人格的に優れた"人間"は幽霊になれる』って
 いつもおかあさん言ってたよね

 これは人間だけの話なの・・・?



 むかしっからゼノースは私を見るたびに
 喜んでワタシに飛びついてくるのよ?
 愛しているに決まっている 


 人間と同じように愛していても
 動物は何も遺さずに
 ただ体を食べられるだけなんて
 不公平すぎる・・・」





枯れたはずの涙が
滝のように流れ出した



死にそうなゼノースを前にして
これまでにないくらい
泣いたはずだったのに・・・





一方ソフィアは
顔色一つ変えずに
シルビアの話を聞くだけだ










「・・・シルビア
 魔力が足りないから
 幽霊になれないのじゃ―」



「おかあさんってどんな不幸なことも
 魔力とか術とか訳の分からない話で
 誤魔化そうとするよね!



 結局魔法なんて人間だけが得するモノじゃない!
 科学だってそう!"自然"とは違うもの!

 誰が最初に魔法とか幽霊とか言ったの!?
 それは人間が勝手に言い出したものでしょ!」



「シルビア!黙って話を―」



「もういい!

 おかあさんは現実を見なさいって
 偉そうに言ってばかりだけどさぁ!

 現実から一番目を背けているのは
 おかあさんのほうじゃないの!?」



「・・・!」










昨日、友の骸を目前にして
シルビアが絶望の渦中で
何を考えていたのか





本物の幽霊を
間近で見たときのあるシルビアは
"気休め"に見守られていると
現実を誤魔化すことなどできなかった





「何も言えないんでしょ!
 人間は汚い!綺麗事ばかりいわないで!」










座っていた椅子を蹴飛ばして
シルビアは部屋から出て行く



ソフィアは家の外に飛び出し
何処かへ遠ざかってゆくシルビアを見て
思わず立ち上がる



しかし後を追うことはなかった

























半日ぶりにシルビアが住処を訪れると
予想通りゼノースの肉は
残らず鷹に啄まれ
骨だけがそこに残っていた

コメントの投稿





管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sunyama.blog133.fc2.com/tb.php/125-583869d7

プロフィール

sun

Author:sun
心理学をベースに、あらゆるものを詰めこんだバトル物の小説を連載しております!
たまに短い童話も掲載しております!

Twitter
pixiv

カテゴリ

検索フォーム

リンク

最新記事

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR