汚いオトナたち Part1

2011 - 03/08 [Tue] - 23:11

教養と知識は別物だ

危険だと思われるのは
勉強していくにつれて陥る
あの呪われた知識というやつである

どんなものもみな
頭をとおらなくては気がすまなくなる

―青春時代





【ウィッシュ=フローラ】

黒い長髪、中性的な容姿の男
非常に強大な魔法使いである

子供のような無邪気さと
大人のような冷静さを併せ持つ















思ったより都会とは
複雑で整然としないものだ















この街に来たウィッシュは
いたるところに落書きがある
路地裏に迷い込んでしまった





日は傾き
狭い通りを挟む壁は
建物の影と夕闇に彩られる

ウィッシュの長い影は
影と夕闇の境界線で消える



まだ家に帰るのに余裕がある、と
のんびりと歩くウィッシュ



マイペースな彼は
道端に吐き捨てられたガムを踏みながら
よりゴミゴミとした
人気の無い所へと進んでゆく

























突然、鉄の塊が落ちるような音が聞こえた





そこの角を曲がった先からだ





パイプから滴ってできた水溜りを越え
ウィッシュは音が鳴り続ける方へゆく










見ると"がたい"のよい少年が
顔から血を出している青年の上で馬乗りし
大きな拳を顔面目掛けて振り下ろし続けている!



馬乗りしている少年は肌が黒く
白いタンクトップを着ている



暗い路地の落書きだらけの建物壁には
血飛沫がこぶりついている

他にも三人の大人たちが
先に殴り倒されたのだろうか
苦痛にもがいている










ウィッシュの足音に気づいたのか
体格の良い少年とウィッシュは目が合う



少年は下で倒れている
血で染まった青年の顔に唾を吐き
立ち上がりウィッシュ目掛けて走り出す!










もしケンカで勝ったとしても
賠償金やら慰謝料やら面倒な話になるから
出来れば一目散に逃げ出したかった

しかし目の前で人が倒れているのを見て
自分だけ逃げるのも後味が悪い










ウィッシュは少年が殴りかかる瞬間
すかさず横にかわして
片足を少年の足に引っ掛ける



ウィッシュの足につまずいた少年は
その勢いのまま蓋の開いたゴミ箱と激突!
生ゴミまみれになってしまった






 



ウィッシュは純粋だ
ひたすらまっすぐな性格だ

きっとそれの裏返しなのだろう
ウィッシュは敵と決めた人には容赦ない





すかさずゴミの山から鉄パイプを拾い
立ち上がろうとした怒りの少年を魔法で拘束する





そして鼻が折れ曲がり
肩を脱臼した痛みで声をあげて泣く
四人の大人たちに魔法で応急処置を施し
「あとは病院で診てもらってくださいよ」と言って
ウィッシュは大人たちを逃した



大人たちは動けない少年を
あからさまに見下す目つきで見る



「死ね!」「クソが!」
曲がり角に大人たちが消えるまで
少年は罵言を並べ立てた

























更に日は傾き
ウィッシュと少年の長い影の輪郭は
オレンジ色にぼやける










「あの人たちが何をしたというんだ?」

ウィッシュは少年を魔法で拘束したまま
上目遣いで睨む彼に問いかける



「あいつらがよぉ!
 オレを指差して
 学校にも行かない
 頭の悪いクズだと言いやがったんだ!」

「・・・知り合いなの?」

「ちげぇ!」

「じゃあ、喧嘩を売られたのかな?」

「あんなヒョロメガネでニキビ野郎のどこに
 俺に喧嘩売る度胸があるんだ!?

 マックスって言えば
 サツ<警察>どももビビッて逃げるからな!」

「あ~なるほどね

 それであの人たちが
 君を喧嘩しかできない子どもだって
 陰で笑ったってわけか」

「あぁ!?
 テメェ俺が喧嘩しかできねぇと
 思ってんじゃねぇのか!?」

「あ、いや・・・
 そういうつもりじゃないんだけど・・・」

「離せ!オカマ野郎!
 離せっつってんだよ!」

「・・・ふぅ」



溜息をついて
ウィッシュは喧嘩の強い少年こと
マックスを解放してやる



束縛をとかれたマックスは
怖い顔をしてウィッシュにガンをつける

自分より背の高いマックスに
ウィッシュは愛想笑いを浮かべる



「テメェ天使<ウィッシュ>だろ?
 魔法使いで有名な」

「あぁ、そうだけど・・・」



ウィッシュから離れ
壁に寄りかかり
マックスは腕を組んだ



「テメェ俺に魔法を教えろ
 さっき俺にやったヤツのような
 ケンカで負けない魔法を

 できるんだろ?」

首をひねりながらの要求



「えぇ?
 できることはできるけど
 あのような魔法覚えるのって
 結構時間かかるよ?」

「俺を馬鹿呼ばわりすんのか?」

「そうじゃないけどさ・・・」





無茶な要求に戸惑うウィッシュに
マックスは自分語りを始めた

彼は昔はそこそこ有名な学校に通っていたらしく
むしろ勉強ができるエリートだったらしい



しかし「就職率100%!」と謳う広告に魅せられ
ただ「楽だから」と両親と相談もせず
何も考えずにその学校に入ったときから
生活は荒んだものになった

100%なことは100%なのだが
ブラック企業からトイレの清掃員まで
あらゆる職業を含めての100%だった

先輩たちの実体験を聞くと
その学校でまともな職にありつける人は
一人もいないらしい

掃き溜めの集う学校と
レッテルが貼られれていると知ったのは
マックスが入学してからであった



大人たちに騙されたと思い
自らの未来に絶望したマックスは
学校を辞めて大人たちへ"復讐"を繰り返す
暴力と犯罪に明け暮れる日々を過ごしている





「・・・で、魔法を覚えてどうするんだよ」

「あ?テメェの知ったこっちゃねぇだろ」





日は沈みかけ
紫色の空のでカラスが鳴く





「いや、いっちゃ悪いけど
 喧嘩とかに使うんでしょ

 それじゃあ教えられないよ」

「はぁ!?殺すぞ!?」

「脅してもムダ
 もう帰らないといけないし

 今日の晩ごはんは
 俺が作ることになっているんだ」

「そんなのテメェの都合だろ!」



マックスは近くのゴミ箱を蹴り倒し
更にパンチでそれを破壊する



「そんなこと言ったって
 俺には俺の都合があるし・・・」

「あぁ、そうやって逃げるんだな!
 嘘ついて要領よく逃げやがって!

 だからオトナはキライなんだよ!」

「・・・」





マックスは何か思いついたように
不敵に笑ってみせる



「テメェが逃げるってなら
 俺はさっきのやつを追いかけて
 今度はぶっ殺してやる!」

「・・・ほんとに?」

「ほんとだ!うるせぇ!」





君のほうが汚いじゃないか、と
ウィッシュは言いそうになったが
ぐっとこらえる





「・・・仕方ないね

 今すぐに魔法を使える方法は
 あることにはあるよ

 ただ条件がある」



観念して首を振るウィッシュ
ボソッとマックスに話す



「んだぁ?」

「君が悪さをしないように
 催眠術をかけさせてもらうよ

 悪いことに魔法を使おうとしたら
 体中が痛んで君はうごけなくなる」

「催眠術?あんなのインチキだろ
 そんなこと言っても俺はやっからな」

「インチキ?

 いやいや、確かに催眠術は
 被験者が術者に対する信頼関係
 つまりかかりたいと思う気持ちがなければ
 成立しない技術なんだけど
 俺の場合は魔法で
 ムリヤリ変性意識まで・・・」

「うぜぇ!!」

「!?」

「いいから教えろ!」

「はいはい・・・」










ウィッシュはまずマックスを
宣言どおり魔法の力で
変性意識<半分眠ている>状態にして
言ったとおりの"リミッター"を聞かせる





次に深く精神を集中させて
魔力を凝縮させた"クリスタル"を精製

マックスを起こしたあと
魔法の概念と基本の術を
所々はしょって教える















そして日は完全に沈む





ウィッシュはマックスに
「悪さはしないでよ」と言い残して
その場から去っていった





「へへへ・・・」
マックスはクリスタルをみつめて
悪い企みに耽っていた




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