flash meteor Part7

2011 - 03/20 [Sun] - 15:45

小さいことを積み重ねるのが
とんでもないところへ行く
ただひとつの道だと思っています

―鈴木一郎





【ロア=フローラ】
口が悪くイタズラ好きで高飛車な男
髪を茶に染めて肉体は引き締まっている

裏では血の滲む地道な鍛錬を重ねており
プレッシャーに弱い繊細な一面も


【ロバート=フローラ】
弱者を救うために戦い続けた男
妻のソフィア曰く同格の魔法使い<格闘家>

現在は親バカに目覚めており
フローラ四兄妹に煙たがられている


【ソフィア=フローラ】
クセのあるフローラ家をまとめる母
優しく思慮深いが毒舌な一面も

独特な魔法の形態や思想から
一時期世界中を賑わせた















紛いも無くロアが最強だ!





スタジアムの中央の高台で
ロアは勝ち鬨をあげながら
全身を震わせて勝利に酔う



高台の周囲から
カメラのフラッシュが一頻りに光る

観客席からは歓声と、祝福と
ロアの名前が聞こえてくる



ロアに近い椅子に座る
父、ロバートは思わず
おう、おうと男泣きしてしまった





敗北の苦さ、鍛錬の痛み
全てを足してもこの喜びを
差し引くことなど出来ない!

























ロアは大会スタッフに囲まれる

服装が整った壮年の男が
脂のたぎらせた顔に
ねっとりとした笑顔を浮かべている



後ろには大層なカメラを
肩に乗せたカメラマンや

ロアの見栄えを良くするため
ライトをあてるスタッフらがいた



スタジアムのスクリーンに
ロアの顔が大きく映る










「優勝、おめでとうございます!
 今のお気持ちはどうですか?」



インタビューは暗記した台詞を
スラスラと述べると
ロアの口元にマイクを向ける





「はい!今オレは―」

と、そこでロアの言葉が途切れる



かなりの高さにいたロアは
突如、そこから足を滑らせて
転落するような錯覚に陥った










ロアは一瞬だけ後ろを振り返る





対戦相手の少年が
負けたショックで下を俯きながら
彼のセコンドと思わしき人に
慰められながら出口に消えてゆく










彼はどう思っているのだろう?



もしかしたら
「ロアが強いのは、父親が強いから」などと
文句を垂れ流しながら控え室で言うかもしれない



そうでなくとも
泣き目を見ているのは確実だ















ロアが初めて
この大会で敗北したときには
対戦相手のインタビューが
とても耳障りだった



飾った言葉でインタビューに答えると
観衆は沸き立ち「感動をありがとう!」などと
涙を流す者たちがいたのを覚えている





余命半年、なんて最初に言っておいて
最後には恋人が死んで涙するという
陳腐で滑稽な小説みたいだ



そして、その物語を
「泣ける!」などと騒ぎ立てる人々は
自分を物語の主人公と重ね合わせて
あたかも自分が分かりきったように
達観した口調で嬉しそうに語るのである





これは見せ物ではない

オレは誰かに勇気を与えるような
大それたことはしていない



ロアにとっては楽しむ場所

勝利を得る、という
明確な共通の目標を持つ
ライバルと戦う中に
楽しみを見出す場所だ





文句を言ったり
志を壮語する場所とは違うのだ















「ロアさん?」

インタビューの人が
上の空のロアに話しかける





はっと我に返り
ロアはインタビューの返答の
言葉を色々考えるが
ありふれたものしか思いつかない





「試合に勝って
 どんなお気持ちですか?」



フラッシュを浴び続ける
スクリーンに映ったロアの表情から
熱が引くのが分かった



白目がどろりと左右に動いて
口元をそばだてるロアの言葉を
観衆一同が待ちわびる



ロアは落ち着いた口調で
ただ一言だけ、こう答えた



「楽しかったです!」と










対戦相手は
驚愕した表情でロアを振り返る

そのまま彼は
笑みを浮かべるセコンドに
背中を軽く叩かれながら
控え室に続く廊下へ帰った










「そうですか!
 そうですよね!

 今まで貴方は"我々"の想像を絶する
 人一倍の努力をしてこられましたからね!

 "我々"は皆貴方のことを
 初めて貴方が負けたときから
 心密かに応援しておりましたが・・・?」





ロアはそのまま
高台の隅の椅子に座るロバートの元へ



ロバートは腕で涙を拭うと
立ち上がってロアとハイタッチ



肩を組みながら
対戦相手とは反対の
控え室に続く出口へと帰ろうと
インタビュアーに背を向ける





「ちょ、ちょっと!お待ちください!
 無理しなくて良いのですよ!?

 貴方には"絶対"に言いたいことがあるはずだ!
 何も気を遣ってくれなくても!?

 "我々"はこの大会の王者として
 貴方の功績を称えつつ
 "共に"戦った応援者として
 貴方のお気持ちを・・・!」










涙を拭くハンカチを準備していた
女性たちは拍子抜けして
ロアを"気取ったヤツ"だと陰口を叩く



さっきまで訳もなく騒いでいた
男性たちは水がさされた思いで
ロアを"ノリの悪いヤツ"だと罵る















しかし

息子が勝った瞬間から
涙を流していた母<ソフィア>

唖然とするインタビュアーを嘲笑いつつも
誰よりも先にロアに拍手を送った兄<ウィッシュ>

弟を称え、叫び続けながら
ロアに向かって手を振り続ける姉<シルビア>

満天の笑顔を浮かべ、何度も飛び上がりながら
いっぱいの力をこめて"不撓不屈"の旗を振る妹<ステラ>

応援に駆けつけた
ロアの友人たちやライバル

その他一部の観客たちは
控え室に続く廊下の光に消えるまで
手を振り続けるロアを祝福しつづけた!


















































そして、今





光速の流星の通り名を持つ
ロア=フローラは自立し
筋金入りの賞金稼ぎとなった





彼は悪党どもを懲らしめる傍ら
多くの教え子に己の強さを伝授している





教え子たちは決まって
自暴自棄になった不良の少年だったり
内気で自殺さえ考えたことのある少女だったりと
人生に喜びを見出せない人ばかりだ

協調性がない人たちも少なくなく
孤独に生きる人も多い



しかし彼らがロアとともに
厳しいトレーニングを積むときは
決まって一つにまとまり
どこか楽しそうだ





その光景を見るたびに
ロアはあの時、大会で優勝したときのような
はち切れんばかりの笑顔を浮かべて
飽くことのない幸せを感じるのだ




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