cosmic fairy Part6

2011 - 03/27 [Sun] - 18:10

人生でぶつかる問題に
そもそも正解なんてない

とりあえずの答えがあるだけです

―養老孟司





【ステラ=フローラ】(兄妹の一番下)

突然変異として生まれ抜群の頭脳を持ち
年の割りに金髪の少女と見紛う姿となった

かなりの機械好きであり、独特の感性を生かした
数々の発明品を生み出すことが趣味



【ソフィア=フローラ】
クセのあるフローラ家をまとめる母
優しく思慮深いが毒舌で運動音痴な一面も

独特な魔法の形態や思想から
一時期世界中を賑わせた



【ロバート=フローラ】
弱者を救うために戦い続けた男
ソフィア曰く同格の格闘家<魔法使い>

現在は親バカに目覚めており
フローラ四兄妹に煙たがられている



【ウィッシュ=フローラ】(兄妹の一番上)

無邪気さとニヒルさの間で飄々としている男
黒い長髪、中性的な容姿は仕事<催眠療法>のため

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を操り
魔力を神のように崇める独特の宗教観を持つ



【シルビア=フローラ】(兄妹の2番目)

褐色の肌に長い銀髪が映えるワイルドレディ
勝気ながら上品さも備えるアクティブな女性

獣のような五感と幅広い自然の知識を持ち
詩のない歌声で荒ぶる動物たちを従える



【ロア=フローラ】(兄妹の3番目)

口が悪くイタズラ好きで高飛車な男
髪を茶に染めて肉体は引き締まっている

裏では血の滲む地道な鍛錬を重ねており
プレッシャーに弱い繊細な一面も















「ステラ、頼みがあるんだけど」

ウィッシュはカーテンを閉め切った部屋の中で
ベッドに横たわりながら、額に皺を寄せるステラに
恐る恐る話しかける





何故、いつもは明るいステラが
こうも根暗になっているのか



ウィッシュはここ最近
ステラが応募したコンクールの全てで
落選したせいで落ち込んでいるのだと思っている



実際は、ウィッシュを初めとした
家族に抱いている劣等感から
このように歪んだ性格となっているのだ










「なに?」

冷たく刺すような一声



「あ、いや・・・悪いんだけどさ」

暫く見ないうちに変わったな、とウィッシュは思う





たまにウィッシュは実家に顔を出すが
この数ヶ月の間、ステラはラボに篭りっぱなしだった

それもそのはず
兄や姉を見返すために
懸命に製作に当たっていたのだから
実質数ヶ月ぶりに会ったことになる





「なに?面倒くさい
 早く言って、邪魔だから」





殺気にも似た勢いに乗せながら
ステラはウィッシュを罵り続ける





どうもこの様子は異常だ

普通なら少しくらい
おにーちゃん!と笑顔になってもいいのだが

まあ、ウィッシュが今のステラくらいの年頃には
何事もつまらないと無気力のまま"死んでいた"し
ステラが"生きよう"としないのも無理は無い





それとなくステラの目からは憎悪が感じられる



・・・そういえば、最後に兄妹4人で
遊園地に遊びに行ったとき
俺たち3人がステラを放っておいたとき

・・・あのとき、3人でステラを
数十分も待たせたことを謝ったときも
このような目つきだった





俺<ウィッシュ>に対する劣等感なのかもしれない
ステラが見せる憎悪の根源は





だったら尚更、そのことに触れないように
ステラに頼みごとをして
さっさとこの場から去ったほうが得策だろう





「・・・あのさ、前に作ってもらった浄水器あるよね?

 あれをある人(?)にあげるんだけど
 その人、複雑な機械の扱いがどうしてもだめで・・・

 ワンプッシュで使えるように
 改造してくれないかな?」

「はぁ?」



ステラはそっぽを向いて
わざと苛立ちをウィッシュに見せ付ける



「なんでアタシなの?
 他の人に頼めばいいでしょ」

「いや、多分これを改造できるのは
 ステラしかいない」

「そうやってアタシを利用して
 さも自分が作ったように見せかけて
 点数稼ぐつもり?」

「それはないね
 ちゃんと本人にも
 『ステラに頼む』と言っておいたし」

「あっそ」

「・・・あっそ、じゃ困る!
 
 かなりの年齢なのに
 毎日近くの川まで水を汲みに行って
 辛い思いをしているんだ」

「魔法を使えば?」

「無理だ!」

「ウソ!」

「違う!」





半開きのドアを通して
家中に二人の声がきりきりと響く

リビングのソファーに座る両親は
このように大声があがることを
一応予想していたのだが
あえて口を挟むまい、と固かった





「無限の力<魔法>とかカッコつけたこと
 いつも言ってる割には
 一人では何も出来ない意気地無し!」

「お前、基本的なことも忘れたのか!?

 無限の力っていうのは
 謙遜して、でも自信を持って
 『自分にはたくさんの"もの"から
  魔力<自分に無い力>を分けてもらっていると
  自覚してこそ生まれる』って
 小さい頃からずっと母さんが言っていただろ!?

 すこし言い過ぎだぞ!?」

「受け売りでしょ!?」

「お前も家族の一人だろ!?」

「はいはい!
 アタシには魔力も何もありませんよ!

 子どものときから魔法の才能があって
 幸せそうね!アタシと違って!」

「・・・」





返す言葉が見つからなかった

いや、"追撃"を掛けたくなかった
と言うのが正しいのかもしれない





「どうしたの?図星?」

あからさまに悪意に満ちた
薄暗い笑窪を浮かべて罵るステラ





思わずウィッシュは
ドアの横、斜め右後ろにある
部屋の壁を叩きつける!



めりっ、と薄い壁が破ける音がした
拳を引いたウィッシュの右手に
白い"跡"がこぶりついている



目を見開いて怯え
ベッドから跳ね上がるステラ

ウィッシュの瞳孔が小さく見える





短気なウィッシュを怒らせたらただでは済まない

怒ったウィッシュが怖いのはよく知っている

途端に残酷な性格になって
吐き気を催すグロテスクな怪物や
精神がイカれる理解不能な悪夢を
催眠術を主とした魔法を駆使して
平気で見せ付けてくる





「・・・分かった
 だが改造だけはしてくれ
 約束なんだ・・・」

極力感情を押し殺した
無機質な声でウィッシュが言う



彼の頼みを断ることは出来なかった

"喧嘩"になって戦ったとしても
今ここに銃などの科学兵器は無いので
ステラの精神がヤラれることは分かりきっていた





ステラは恐怖で震えながら
そそくさとウィッシュとすれ違い
いち早く自室から繋がる地下のラボに向かう





あぁ、また怒ってしまったな、と思い詰めながら
暗い顔したウィッシュもステラの後を追う

























電球が一つついただけの
暗い地下室の中

ウィッシュが浄水器を渡すと
ステラは常軌を逸した段取りと速さで
次々と部品を組み立てていく

数ヶ月前とは比にならない技量をつけたものかと
ウィッシュはただただ驚倒するだけだった



ボルト、ネジ、配線
ボタン配置や溶接の仕方に至るまで
寸分の狂いも無い





「はい、終わり」と
ステラは当然のように、素っ気ない表情で
ボタンが一つだけしかない浄水器が
ウィッシュに手渡された



「あぁ・・・ありがとう・・・」

この天才を褒め称えるのに
どう言葉を紡げばよいのか?



「なに?気に入らない?」

「いや、十分・・・ただ、スゴイなって」

「ふーん」

ステラは階段を上がって
自室に戻ろうとする



「あ、ステラ、伝言」

足を止めて振りかえるステラ

「『こんな機械の使い方も知らない時代遅れの神に
  わざわざ手を尽くしてくれるなど
  滅多に無いことだ!ありがたい!』って」

「・・・神?」

「あっ!?」

出来れば他言したく無いことを洩らして
肝を冷やすウィッシュ

神さまと友だちだ!なんて言う男は
傍目から見てどれほど奇妙なことか



「あぁ、仇名なんだ・・・その人の」

不思議がる顔で見てくるステラに
裏返った声でウィッシュは話す



ウィッシュは人の隠し事には敏感だが
自分が嘘をついたりするのは苦手だ



「そう?・・・ま、どういたしまして」



もう"仇名"なんて嘘だと分かる
ウィッシュの焦った顔を見れば



彼ほどの実力があれば
神さまと五分の盃を交わすことも
十二分にあり得るので
ステラはすんなりと受け入れた



ステラは神妙な面持ちで
自室に帰っていく





そうか、神さまがアタシを・・・



































次の日に久しぶりにシルビアが
ステラの部屋に現れた



シルビアは先ほど両親から
「ステラ、アンタ達にコンプレックスがあるみたい
 昨日なんてウィッシュと大声をあげて喧嘩したのよ
 頼みごとだけして放っておきなさい」と聞いた





シルビアはステラの部屋の扉をノックして
部屋に入らずにドア越しに話しかける

「・・・突然で悪いんだけど
 移動用の乗り物を作ってくれないかしら?

 それも空気とかを汚染しないで
 乗る人自体が魔法を使わなくてすむのを」



ステラからの返事は無い

やっぱり、と思っていたのだが
小さな声で「・・・どんな人から頼まれた?」と
ドア越しにステラの声が聞こえた



「入るわよ?」

「うん・・・」



シルビアはドアを開けて
ステラが無造作に寝転がるベッドの傍による

先ほどまで寝ていたかのような顔つきのステラ



シルビアは魔力を片手に集中させる
魔力の光が雑誌の輪郭を模ると
それはある観光雑誌へと変わった





シルビアはある1ページを開いて
半目に開くステラに壮年の執事を見せた





「こんな人」

経歴、そこそこ名の知れた金持ちの執事だ
職業、ある島を守るために奮闘している



「・・・この人が?」

「えぇ、そうよ」

「・・・なんで大金持ちなのにアタシに頼むの?」

「アンタしかできないからに決まっているじゃない」

「ふ~ん」



あれ?両親が言うほど機嫌が悪くない、と
シルビアは気づかれないように
きょとん顔をした





ステラは無言でベッドから起きては
自室に隠してある階段を降りてゆく





もしかしてお兄ちゃん<ウィッシュ>が
変なこと喋ったのが悪いんじゃないの?と
シルビアはウィッシュに(勝手に)呆れながら
ステラの後を追いかける















ステラはラボにある作業用の机の中から
数字だらけの設計図を取り出すと同時に
あらゆる道具を引っ張り出して作業着に着替える

すぐさま自分が描いた設計図に沿って
次々と部品を組み込んでゆく



シルビアが「三個くらいあれば助かる」と言ったら
本当に三個を流れ作業で作り上げた





出来た機械は"スカイ=ランナー"そのものだ

それはキックボードのような外見で
搭乗者の魔力を(環境に優しい)エネルギーに変えて
後方部の推進器で空を飛ぶ機械なのだが
如何せん、魔法を使えなければ乗れない一人用の乗り物



ステラが言うには
「空中で乗れないことと引き換えにして
 魔法が使えない人でも乗ることが出来るくらい
 エネルギー効率を改良した」らしい



なるほど、これなら要望通りのものになる





シルビアはそれを受け取り
魔法で異次元にそれらを"飛ばした"
(青いタヌキの"四次元ポケット"みたいな魔法だ!)



ステラの気を悪くしないように
シルビアは一礼すると
ステラよりも早くその場を去ろうとする





ぼんやりと立ち尽くすステラに
シルビアはあることを尋ねる



「ねぇ、ステラ?お兄ちゃんになんかされたの?」

「え・・・?」



ステラはウィッシュと喧嘩したが
シルビアとは喧嘩しなかった

原因はウィッシュが余計なことを言ったのだと
シルビアは間違った解釈をして
ステラを慰めようとする思惑で尋ねたのだ



「昨日・・・ね、本当は酷いこと言われたから
 お兄ちゃんと喧嘩したんでしょ?」



それは違う
先に酷いことを言ったのはステラの方だ



しかし、アタシの方から喧嘩を売った
なんて恥ずかしいことは言えず
そのまま黙ったままだった





あまりにもステラが黙っているものだから
シルビアはこれ以上、昨日のことを抉るのは
それこそステラに酷であると思った



「・・・そう、でもあまり溜め込んじゃダメよ」



優しい姉の微笑み



シルビアはステラから
恨まれていることなど
知るはずも無い



だがステラから見たシルビアの微笑みは
まるで自分の過ちを赦してくれるようだ

自分の心情を察してくれたのだろうか?

文字通り、胸に溜め込んだものが
抜けてゆくように思えた



実際はお互いに
思い違いをしているのだが・・・





シルビアはこれを届けなければと
地下室を後にする



シルビアはぼんやりとその場で立ち尽くしていた































シルビアが来てから二日後に
ロアがステラの部屋に入ってきた





ロアはいつもと変わらぬ口調で
「おい、リミッターウエポン作りやがれ
 ジムの模擬試合でグローブとか使っても
 怪我する人が減らねぇんだ」と
何か、見えないものを見つめるような顔したステラに
何様かと思うように詰め寄る





一番ムカつくヤツが来た

先の二人の場合は
神さまだったり、それなり偉い人だったりとしたのが
アタシを高く評価しているからこそ
付き合ってあげたものを・・・

それがコイツの"個人的"な要望で・・・





「なに?その頼み方?
 アタシを何だと思ってるの?」



上半身を起こしてステラは
半分叫びながらロアを威圧する





千歩くらい譲って
三日前と二日前のことは
勝手に怒ったアタシが悪いと認めたとする

だとしても、こいつを目の前にして
アタシが怒ったとしても
何の罪があろうか!?



むしろ怒らなければいけない!
一人の人間として、あごで使われる屈辱のために!





「はぁ!?人が怪我すんだぞ!
 オマエ知らん振りするつもりか!?」





ロアはロアで
ここ数日、足りない頭を精一杯酷使したので
ステラほどではないが苛立っている





「だから!だったら態度があるでしょ!
 いきなり『つくりやがれ』とかふざけんな!」





ロアは舌打ちして目をそらす





意地でも傲慢であろうとするのが頭にきて
ステラがロアをぶん殴るために
ベッドから身体を乗り出そうとした瞬間だ





ロアはいきなり膝をついて
そのまま両足、両手と床につく

遂には頭を下げながら
「頼む!!」と言った!





驚いたステラは
振り上げた拳を下げて
いつになく真剣な表情をしたロアを見る





「・・・それだけ?」と
意地悪してステラが言う



するとロアは立ち上がり
ポケットから財布を取り出して
結構な大金を差し出した!



「これでもダメか!?」

切羽詰った形相のロアが言う





・・・どうやら本気のようだ

まさか土下座までするとは思わなかった

恐らく、頼みの綱はアタシしかないのだろう

プライドが高いロアがこんなにも・・・















ステラは初めてロアに
何かしらの長所で"勝った"と確信した





自然と顔がにやける

アハハ!と声をあげて笑う



・・・久しぶりに笑った気がする!





突然笑い出したステラを不審に思い
ロアは半歩引いてステラを変な目で見る





「ダメといったら?」



あの口達者な兄貴を
見下すことが出来るなんて
またとない機会だ!

今の内に今までやられた分
全部返してやらなければ!





さっきまでとは打って変わって
ステラは持ち前の独特な挙動を交えながら
ニヤニヤと笑いながらロアに問いかける





「はぁ!?

 ・・・じゃあオマエの助手になってやるからさ
 今から必要な数だけ作る間は・・・」

「ん~?兄貴が助手になっても
 足手まといにしかならないしなぁ~」

「なんだと!?
 足元ばっかり見やがって!
 ふざけんじゃねぇ!」

「あれぇ~?

 せっかくダメ兄貴のために
 作ってあげようとしているのに
 殴りかかろうとするんだ?ひど~い!」





これはいい!

あの兄貴が徐々に追い詰められて
自分が"でかく"なってゆく様が気持ちいい!





「ぬぅぉあ~!!ムカツク!!」

「はぁ、兄貴、声も身体も無駄に大きいなぁ・・・」

「あぁ~!!

 分かった!
 オマエはオレよりずっと偉い!賢い!素晴らしい!

 ちっこいクセしてオレが知る人の中で一番すげぇ!

 だから頼む!いや、お願いします!!」

「『ちっこいクセして?』へぇ~・・・」

「待て!悪かった!だからいい加減にしろ!!」




再び、ベッドに腕を組んで横たわるステラの前で
大きく土下座しては声を張り上げて頼み込む





「うるせぇ!静かにしろ!」

「ロア、うるさい!」



下の階に居る父と母は
ロアだけを叱りつける



「なんでだよ!
 わりぃのはステラだぜ!?」と
ロアは大声で返すが



「大の大人が!ちいせぇんだよ!」と
父、ロバートに罵られ

「おまえ身体だけでかくて邪魔なんだよ!」と
母、ソフィアに罵られる





うわぁ~、と情けない声を出して
大の字になって四肢を床に投げ打つロア





ステラはこれ以上なく
満足そうな笑顔で
べーっと舌出した後に
ベッドから飛び上がって
スキップ交じりに地下のラボへと向かった





いつものステラと変わらぬ調子だった




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