魔法使いはリアリスト Part1

2011 - 04/05 [Tue] - 19:15

みんな、いろんなものを
ドラマチックに面白く報道したがるんですよね

真実というのは
得てして単純で面白くないもの

平凡なものなんですよ

―岡田武史





【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で飄々としている気ままに生きる男
黒い長髪、中性的な容姿は仕事<催眠療法>のため

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力を神のように崇める独特の宗教観を持つがどこかぬけている



【チャーリー】

巻き上げた金髪とつぶれた頬を持つ少年
弱虫で一人で溜め込む性格だからかいじめの対象になっていた

年相応の好奇心と無鉄砲さを引っさげて遊ぶ姿は
どこか危なっかしく、ついつい口を出したくなる















「じゃあまず・・・

 橋の無い川の向こうに
 チャーリーが持っているリンゴを欲しがる人がいます

 魔法を使ってその人にリンゴをあげるのに
 正しい方法ってなんだと思う?」










今日はチャーリーの所に通う、月に一度の日だ





この日は少し寒い

昼に窓を開けていないのは久しぶりだ





花柄を模した白いレースに当てられて
影も花柄となっている





透明なシートがかけられた
明るい色の木のテーブルを挟んで
チャーリーとウィッシュは向かい合って座る



チャーリーのママさんが淹れてくれた紅茶と
バスケットに入った甘いクッキーをご馳走になりながら
チャーリーに魔法<フローラ=マジック>を教えているのだ










「テレキネシス<手に触れずに物を動かす魔法>を使う!」



小さな身体を乗り出して
チャーリーは自信たっぷりに答える





「・・・残念だけど、それは間違い」

ウィッシュは出来る限りチャーリーを傷つけないよう
微かに笑みを浮かべながら優しい声でそう言った





「えぇ!?じゃあ正解は!?」



まさか間違いだとは思わなかったので
チャーリーは身を引いて行儀よく座り直す





「答えはねぇ、空を飛んで川を渡って直接渡す」

「なんで?テレキネシスの方が早いよ?」





ウィッシュは、キッチンミトンをつけたままの
チャーリーのママさんから紅茶のおかわりをいただいて
彼女に感謝したあと、怪訝な顔したチャーリーを見つめる





「んーとさ・・・

 たしかにテレキネシスの方が早いけど
 それじゃあマナー違反になっちゃうんだよね

 『俺は魔法を使えるからすげぇんだぞ!』なんて
 遠まわしに言っているようなものだから

 そうでなくても、物を渡すときに
 投げて渡したら失礼でしょ?それと同じ

 だから面倒でも空を飛んで
 手で渡さないといけないのさ」



「ふーん、学校の先生みたいなこと言うね」



さりげなくウィッシュに悪態つきながら
チャーリーは"イヤ"な目をした















「・・・じゃあ、次

 街中で空を飛ぶことは
 出来る限り控えたほうがいい
 その理由はなんだと思う?」



質問を変えて仕切りなおすウィッシュ



テーブルの上で両手を組んで乗せる彼は
「わかった!」といわんばかりに
車の窓から身を乗り出すような姿勢をして
キラキラ目を輝かせるチャーリーを見る





「はい!魔法を使ったら
 軍隊や悪の組織に目をつけられて
 大変なことになるから!」



「・・・ほぇ?」

ウィッシュの肩から力が抜ける










「いや、それも無いとは言い切れないけど
 もっと身近なことで・・・」



紅茶を一口、口に運ぶウィッシュ



チャーリーの目はどんよりとしたが
すぐにまたきらきらとさせて
自信満々にこう答える



「力を持った人間は
 差別されて、迫害されるから!」



・・・これまた少年漫画かなんかで
ありがちなテーマのようだ

ウィッシュは片手で目頭をおさえて
「どうしたものか・・・」と数瞬考える





チャーリーが不思議そうに
ウィッシュの顔を覗き込んで暫くすると
ウィッシュは顔をあげてこう言った





「・・・例えば自動車の上スレスレを飛ぶとするよ
 空を飛んでる本人は別にどうも思わない

 でも、運転する人はビックリする
 自分の車がぶつかってしまったんじゃないかとか
 上から落ちてきたんじゃないのかとか

 そうして思わず急ブレーキをかけたら
 交通事故が起きてしまうから
 街で空を飛ぶことはやめたほうがいいわけ」



「でもボクが見たアニメだと・・・」





どうやらチャーリーが言う魔法は
"戦闘ファンタジー"にでてくる魔法のことを言っているらしい





「魔法は銃よりも強力だから
 軍事に利用しようとする人がいて・・・」



「そんなことはないさ、銃も魔法も対等なんだし」



「どうして!?
 魔法を使ってバリア張ったりすれば
 絶対負けないよ!?
 悪い軍隊と違って強いよ!?」



「いやいや、銃を使う人は魔法使いより強いこともある

 前にも言ったけど
 "魔法とは不可能を可能にする、誰にでもある力"だから
 本当に強い人・・・限界を超えるような意志のある人は
 銃弾でバリアを破ったりすることもある、これは極端だけど

 他にも遠くから不意を突いて狙撃すれば勝てるし
 高度なチームワークで僅かな隙を突くのもできるし
 えげつないけど人質を使うのもありだし・・・

 魔法使いが一番強い、なんてことはないんだよ」




「そんなぁ!魔法は最強じゃないの?」



チャーリーは不満そうに顔をテーブルにつける















ウィッシュはチャーリーが
魔法を使えるからいい気になっていると恐れていた



先ほどからこのような質問をし続けているのだが
案の定、チャーリーは傲慢になっている





魔法を使えることで、自分は特別な存在である
いわゆる"井の中の蛙"となっているのだ





ウィッシュとしては何とかして
チャーリーの考えを矯正したい





色々と考えを巡らせるウィッシュに
ある一つの場所・・・

魔法こそ絶対だと信じて疑わなかった
ある部族の根城が思い浮かんだ




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