魔法使いはリアリスト Part2

2011 - 04/06 [Wed] - 15:35

新聞に記されているものも
テレビに映っているものも嘘なんだ

でも俺たちはそれが真実なんだと教えられる

―ノエル・ギャラガー





【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で飄々としている気ままに生きる男
黒い長髪、中性的な容姿は仕事<催眠療法>のため

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力を神のように崇める独特の宗教観を持つがどこかぬけている



【チャーリー】

巻き上げた金髪とつぶれた頬を持つ少年
弱虫で一人で溜め込む性格だからかいじめの対象になっていた

年相応の好奇心と無鉄砲さを引っさげて遊ぶ姿は
どこか危なっかしく、ついつい口を出したくなる















「ここに居た人たちは
 魔法を使う自分たちこそ
 この世で一番偉い、なんて考えていたんだよ

 人の心臓を抉り出して
 それを魔法の実験に使っていたこともある」





湿っぽく、ひんやりとした地下室



ウィッシュが生成した
明るい光球が部屋の中央で浮かんでいる





綿埃と細かい砂が被さった
魔法の呪文や魔方陣が書かれた書物

ビーカーとフラスコの間では
クモの巣が何重にもある

本棚には題名を見ただけで吐き気を催す
おぞましい本が保管されている










ここは、かつて神の名を語り
生贄と称して人体を魔法の研究材料にするのも構わず
科学文明を逆恨みしていた
驕れる魔法使いたちの根城だ





魔法さえあればいい、という考えの末路が
どのようなものかと見せるため
傲慢気味だったチャーリーをここに連れてきたウィッシュ



案の定、子どもには幾ばくか刺激が強く
チャーリーは目と口を大きく開いて
忌まわしい実験室の中で立ち尽くしている










「いい?『何か一つだけが絶対だ』と思ったら
 やがて他のものを見下してしまうようになる

 魔法に限らず、これは色んなことにも言えるね
 『科学こそが全て』、『この世は金で動いている』
 『神は唯一、他は邪神』、『俺こそが世界一の選手』

 こういう考えは身を滅ぼすからね
 ・・・アニメでもこういうの結構あるでしょ?」





ウィッシュの隣にある
人体解剖図と思わしき
黄ばんだ紙切れの山が恐ろしい



「でもボク、絶対こんな風にはならないよ、怖いもん」



チャーリーはしどろもどろな口調で言った





やはりチャーリーにはまだ早い話のようだ

まだ『自分は絶対大丈夫』だと思い込んでいる

勿論、ウィッシュがチャーリーくらいの歳には
同じように考えていたものだが



このくらいの年頃なら
『自分に不可能なことはない
 全てが想像通りに上手くいく』と思って自然だ










「・・・まあ、そのうち分かるようになるさ」



万が一、チャーリーが同じ道を辿ろうとしたら
必ずこの恐ろしい部屋光景が脳裏に浮かぶだろう

それはチャーリーを留める釘になるだろうから
それだけでもここに来た価値があるものだ





ウィッシュは怒ることもせず
「帰ろうか」と和やかに言うと
出口の上り階段の方へ向かっていった















強い光の差す階段を昇りきると
ここの番をしていた二人の守衛とともに
茶光の民族衣装と金の帽子を被った
老年の人物がウィッシュとチャーリーを出迎えた





「久しぶりですな、神の使いよ」



この近くの村に住む部族の長、テンジンだ





・・・思い出すだけでも悶絶ものだ

苦肉の策でウィッシュは女神に化けて
彼から事情を聞き出したら
テンジンは化けたウィッシュを本当の神だと勘違いして
ウィッシュ自身を"女神"の使いだと誤解したのだ





「お久しぶりです、テンジン様」



二人は頭を下げて敬意を払ったが
チャーリーはテンジンが何を言っているのか分からない



ウィッシュは相手と話す言語が違っても
魔法で話を理解できるのだ

普段どおりの言葉を喋っても
テンジンとチャーリーには言葉が通じるのだが
テンジンの言葉は魔法を使うウィッシュにしか分からない










「先ほど守衛の者から
 貴方が祭壇の地下に入ったと聞きましてな
 折り入って頼みごとの為に参ったのです」



しわがれているが、力強い声で
テンジンはウィッシュに言った



「頼みごと?何でしょうか?」



「実は、その・・・
 例の催眠術をかけた6人の魔法使いのことだが

 彼らも十分反省していることだし
 呪縛から解放してやってくれないか?」



「あら?貴方がたはそれでいいのですか?
 あれほど怒っていたのに」



「そうだ、あの時は怒りに任せて
 奴隷として使うようにと判断した

 しかしな、これは神の教えに反するのではないか?」



「あぁ・・・」



「それにな、あの者たちも・・・」









なにやら重い話をしているようだが
チャーリーには関係の無いことだ

そっぽを向いてよく出来た祭壇を眺めている




















「・・・なるほど、分かりました
 彼らにかけた術を解きましょう

 ・・・一応聞きますが
 騙し討ちを仕掛けられる恐れもありますよ?」

「うむ、心配には及ばん
 村の者どもに武装させた上で行うからな」

「分かりました、では早速」



テンジンは一足先に
荒野の向こうにある村へ帰っていった










さて、チャーリーをどうするべきだろうか?



さっきから彼は暇がって
砂の上に落書きを描いたり
空を眺めたりしている





「チャーリー、悪いけど仕事が出来たから
 ちょっと待っていてくれないかな?」



「え~」と顔を顰めるチャーリー
本来なら今は帰路についている所だが
如何せん、この頼みを無下にはできない





「ゴメン!ほんとうに悪いけど
 今から行く村の中で待っていてくれない?」



































「ごめんなさい、謝って済むことではありませんが・・・」



「・・・お前のせいではない
 元を正せば我らが蒔いた結果だ
 我らは首を刎ねられるべきだ

 しかし、僕の身といえど
 この村の者は我らを生かした

 そこで気がついたのだ
 我らがいかに傲慢で・・・」





村の広場で、罪悪感を背負っているウィッシュと
想ったことを述べる改心した魔法使いたちが
長々と会話してばかりだ






関係のないチャーリーは
村の隅の高台でじっと座っている



子供心にさっさとウィッシュが
催眠術を解いて欲しいと思っているのだ










『こんなこともあろうかと』と
ウィッシュから渡されたDS<ゲーム機>で
テトリス<パズルゲーム>を数分くらいやったがすぐ飽きた





せっかく見知らぬ土地に来たのに
不自由に過ごすのは我慢できない





声変わりする前の、高い掛け声とともに
高台から飛び出して辺りを散策することにした















柵で囲まれた村の内部は
固く踏み慣らされた白い土ばかりで

柵の向こうに広がる荒野も
肌を剥き出しにしたような岩ばかり

大して面白くない風景が続いている





村の中では極彩色の衣装を着た人々が
馬小屋を掃除していたり

半裸の成人男性は
畑を耕して、肥料を撒いている





「何しているの?」と話しかけようと近寄っても
言葉が通じないので奇妙な目で見られるばかり















村の中にいてもつまらないし
同じくらいの子どもも居ない










ふと村の出入り口にある門を見ると
一人の三つ編み少女が門から出て行くのが見える

自分よりちょっと背が高い、というくらいで
村の中では一番歳が近そうだ




あの娘の名前はパキャーと言って
テンジンの一人娘である



手桶を持って出て行く彼女は
どうやら近場から水を汲むために行くらしい










何もすることがないチャーリーは
とりあえず彼女の後を追って
村から出て行った




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