a change of voice -animato-

2011 - 05/15 [Sun] - 23:58

いつかは分かる、見守る喜び



【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力を神のように崇める独特の宗教観を持つがどこかぬけている



~あらすじ~

ある日ウィッシュは水晶に封じられた人魚のレイティアを解放する
彼女は大人になることを恐れ、いつまでも子どもの姿でいられるように
魔法の水晶の中で何十年間も眠り続けていたのだ
時代に置き去りにされ、肉親をすべて失い、心を病んだレイティア
ウィッシュはそんな彼女を引き取り
彼の家の近くの海岸に彼女の家を建ててやり
何とか彼女を元気づけようと奮闘している
歌うことが好きなレイティアは
体調が良いときはウィッシュの前で歌うほど、幾分か元気になっていた
変声期を終えて、神秘的な美声を授かった彼女は
ウィッシュの仕事について興味を持ち始める















「今日はおしごと無いの?」

毎日のように、海岸の同じ岩に腰を掛けて
波の音を前に語り合うウィッシュとレイティア

「うん、論文も書き終わったから
 暫くは羽が伸ばせるんだ
 今日一日は、ゆっくりと身体を休めないとね」

「セラピスト<療法士>のおしごともお休み?」

「そうなるね
 …クライアントがいないってのもあるけど」


ため息ひとつ、ウィッシュは自嘲気味に笑う


「どうしたの?」

レイティアは、彼がため息をしたのが不思議だったようだ

「いや、暇だな~って」

「暇?いっぱい遊べるのに?」

「遊ぶ…って言ってもなぁ~
 テレビは見たいものないし、音楽も最近飽きたし
 ゲームとかやる気持ちにはならないし…」

「じゃあウィッシュはおしごとが好きなの?」

「好きってワケじゃあ無いけど…いや、好きかな?」


ウィッシュは顎を掴んで、遠い水平線の向こうを見る


「ねぇ、セラピストって楽しい?」

「ありがちなセリフだけど、なかなか楽しいよ
 元々人に世話焼くのが好きだしね、俺は
 それに…生きている実感が生まれる
 人の記憶に俺の存在を刻むってことで
 自分がこの世にいるっていう実感だね
 分かりやすく言えば、鏡を見て自分の姿を確認する、かな」


レイティアはウィッシュと同じ方を向く

いつまでも飛び続ける白い鳥の影が
今日もまた頭上をよぎる


「…私、なんだか分かるよ
 一人ぼっちだと、どう思われているのか分からないもん」

「あぁ、そうだね」

「…でも、どうしたらいいかな」

「…」

「ウィッシュみたいになれたらいいなぁ
 色んな事知ってるし、何でもできるから」

「そう?君より長く生きているから
 そう見えるだけだと思うけどな」

「でも…」


ゆっくりと胸にあてた手を膝に当たる部分に落として
不安そうにレイティアは言った





「…レイティアはこれからどうするの?
 なにかやってみたいこととかある?」

「私は…何も…」

「そう…」

「…迷惑、なの?」

「違う、ただ、暇なんじゃないのかなって」

「暇?…うん、何かしないとね」


それだけ言うと、再び沈黙が流れた




「…やっぱり、何をしたらいいのか分からない」

「…仕方がないさ、何十年も眠っていたからね」



「出て行った方がいい?私のこと、嫌い?」

「まさか、何度も歌ってくれたからね
 感謝しているよ、本当に」

「う、うん、…どういたしまして」


どうも会話が続かない
お互いに気を遣いあって
思い切った言葉が言えないのだ



「何か…してみたいな、何でもいいから
 …ウィッシュのお手伝いでもいいよ」

「…俺の?いいの?」

レイティアはちょっと背伸びをして
歌を歌おうとする仕草をした


「だって、ほかに行くところないんだもん…」

「…あぁ、そうか、ゴメン」

レイティアがそっと微笑む



「あのね、嬉しかったんだ
 私、声が変わってしまって
 もう後戻りができないってショックを受けたの
 でもウィッシュが誉めてくれたから、ね
 これでいいと思えるようになったの」

「ん?なんか俺言ったっけ?」

「『とっても甘美な歌声なんだよね』って言ったの
 ウィッシュは憶えていないの?」

「…あぁ、あれか!」


「大人になるのが怖かったんだけど
 この声、私大好きだし…
 ウィッシュ、歌を聴いていると
 疲れがとれるって言ってくれた
 だから…もっとたくさんの人に
 私の歌を聞いてもらいたいけど…
 もっと練習したいし、ウィッシュにもお礼がしたいから
 …ねぇ、私でもできることってある?」

「それなら…そうだ、セラピストの手伝いしてみない?」

「え…!?でも、そんないきなり…」

「いやいや、今すぐやれ、なんていうワケじゃないよ
 まずは傍にいるだけでいいし
 恥ずかしかったり、無理だったら
 歌わなくても他に手伝えることがあるからね
 …ちょっと無茶を言っちゃったかな?」

「…ううん、歌いたいの
 歌わせて、おねがい!」

レイティアはウィッシュの両手を持って恭しく言った


水平線を越えた夕日を前に
二人のシルエットが甘美に映る


そのままウィッシュが頷くと
レイティアは何十年ぶりに
優しい人の胸に顔を預けた

(fin)



No title

引き込まれるように読ませて頂きました
現代なのか?過去なのか?未来なのか?
不思議な世界・・・そんな感じ・・・

私もレイティアの歌が聴きたくなりました(^◇^)♪

優様へ

ご想像にお任せします♪
…なんて言うのも投げやりですね(・ω・;

一つだけ言うなら、"a change of voice"の第一話は
2011年4月くらい…今から一ヵ月くらい前の話です
そしてこの最終話の出来事は
つい最近の出来事です

要するに、この一連のエピソードは
第一話で一ヵ月前の"過去"にタイムスリップしていただき
最終話で私たちと同じ"現代"をご覧になることとなりますね

一応、このエピソードはお終いですが
レイティアはウィッシュの助手として
何度も顔を見せることとなるでしょう
同じ悩みを持った人を癒すために、です(・ω・*

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