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2011 - 08/05 [Fri] - 23:05

もしかしたら淡い希望こそが恐怖の源かもしれない




【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力そのものを崇拝する変わり者だが、天然ボケでナイーブ


【アレラーモ=ピストイア】

茶髪のセミロングヘアを持つ、そばかすが特徴的な女の子、15歳
村人たちに大人気のパン屋をたった一人で営んでいる

村人に助けられながら弟を育て、寝る間も惜しんで金を稼ぐのは
優しかった亡き両親の為に墓を作るため


【アンドレア=ピストイア】

茶髪のボブカットを持つ幼い男の子、アレラーモの弟、5歳
いつも姉を手伝うつもりが、逆に姉の仕事を増やしている

それもそのはず、両親の顔は写真だけでしか知らなので
姉に構って貰いたい一心で彼なりに孤独と戦っているのだ




~あらすじ~

高度な占いの技術について取材するため
ある世界に訪れたウィッシュだったが
皮肉にも、そこはその占いがもたらした終末の予言で
生きる気力が削がれた者ばかりが過ごす世界だった

今まで弟に冷たく当たっていたアレラーモは
母が遺した写真によって家族愛に目覚め
せめて最期に、安らぎと共に自ら命を絶つ前に
アンドレアの為になることをしようと思い立った

アレラーモは、以前から弟が欲しがっていた
店で最も美味で高価なパンの材料を探すため
村のはずれで血眼になっているところで
ウィッシュの魔法で助けてもらう

彼女の家で事情を聞いたウィッシュは
「生きていたらいいことがある」と
死を受け入れつつあるアレラーモを諭す

そして「同情するだけの傍観者にはなりたくない」と
彼女を救うためだけにその場を後にした















一切の灯りが無い草原の夜空は
星明りがとても綺麗に見える

少なくともウィッシュにとっては





日は変わり、現在午前1時
6時間後、この場所に隕石が落ちる


未来予知など非常に曖昧で不確実な術だが
この世界の"占星術(占い)"は星の動きを読むため
れっきとした技術と言えなくもない

それを踏まえると
占いで隕石の衝突を予測したとしても
何ら不思議でもない


事実、例の有名な占い師が愛用していた
(彼は"パニックを生んだ"と罪を詫び、湖に身を投げた)
かなり性能の良い、魔法の望遠鏡を最大倍率にして
人々が言った辺りをよく観察してみると

…なるほど、星の光の内一つだけが
徐々に大きくなり、明るさを増している




片手で望遠鏡を持ちながら
地べたに敷いた布の上で膝を伸ばすウィッシュ

あまりにも人々が無気力で
隕石の落ちる場所さえも話してくれなかったので
予想外に疲労が溜まって瞼が重い


もう片方の手で魔法の携帯電話で
コーネにこれまでの事情を説明している

(【コーネ=フローラ】

 芯が強く、聡明で笑顔が似合う金髪の女性
 人助けに喜びを感じる純粋な一方、我儘な一面も

 事実上の奴隷だった彼女は、死の直前ウィッシュと出会った
 幽霊となって今は彼に寄り添うように暮らしている)


この電話は他の世界にいても会話が可能である
人が膨大な魔力を使うワープの術の応用である

話した言葉を魔力に変換
最寄りの"パワースポット"にそれを転送して
ワープの要領で言葉を別の世界に云々…

ただし、地球から月にいる人と無線で話すように
少しばかり声が届くまでに"時差"がある





「…それで、本当に悪いんだけど
 少なくとも後6時間は帰れそうにないんだ
 俺は専門家じゃないから良く分からないけど
 なんか変な物質が降り注いだりしそうで
 ここから破壊するのは怖いからさ
 だから亜空間に隕石を飛ばすのが確実
 でも、そのためには隕石を引きつけないと
 尋常じゃないエネルギーを使うからね」


ウィッシュは眠そうな声でコーネに語る
そこまで、と言うわけではないが
彼は元々身体が弱い上
人一倍睡眠時間を要する


「そうなの?大変だね」

電話を通して聞こえる声色は
どこか心配そうな、いつもより低い声だった
彼のことをよく知っているからだ

「夜ごはんも食べてないし、大丈夫なの?」

「あぁ、ちょっと位置を特定するために
 あちこちの人に聞いて回って疲れたけど
 少しは休める時間があるよ
 一旦自分に催眠術を掛けて休み
 時間が来たら"無限の力(Infinitia)"を解放する」

「そっかあ、なら安心だね」

「まあね、…俺たちは、だけど」


アレラーモのことを気に掛けるウィッシュ

この隕石が落ちてくる場所を特定するために
様々な人々に聞き込みをしたが
大抵の人は出来るだけ隕石から遠く避難するか
自らその命を絶ってしまっていた

彼女を励ましたつもりが
逆に彼女を混乱させる要因となって
終には死の道を選んでしまうかもしれない



確実に成功させる為の英気を養うためとはいえ
一人だけ隕石は落ちてこないという確信を持ち
安心して眠ってしまっても良いのだろうか





「…電池が切れそうだね
 そろそろ俺は寝るよ、おやすみ」

「うん、頑張ってね
 帰ったらウィッシュの好きな
 ドーナツをごちそうしてあげるから」


とことんウィッシュを労わるコーネ
彼が絶対に生きて帰ってくることは分かっている
でも、それでも一人は寂しかった

ウィッシュもコーネをよく知っている
回らない頭を捻って
精一杯の台詞で元気づけようとした


「いや、俺が持ち帰ったお土産を
 皆で分けて食べよう
 パン屋に貸しがあるんだ」

「へぇ~楽しみ!
 じゃあ先に寝ているよ
 おやすみなさい、ウィッシュ」


そう言って通話は終わった





コーネたちにお土産を持って帰られるのは
アレラーモが"生きていれば"の話だ

もしかしたら…と考えると
例えそれが自分のせいでなくても
罪の意識に苛まれるようだった



念の為、携帯電話にアラームをかけた後
ウィッシュは仰向けになって目を閉じ
深呼吸をして深い瞑想に入った

徐々に全身の緊張が解け
無心になって五感が消え去っていく


これは、睡眠と覚醒の狭間にいる状態
無意識が活発になっている状態なのだ




心地よいトランスから醒めるまで
ウィッシュは精神の奥深くで
何度もアレラーモの哀しい笑顔を思い浮かべていた




















荘厳な日の出だ


最後に見る空にしては
あまりにも綺麗すぎて
皮肉にさえ思われる



窓から差し込む早朝の光は
椅子の上で薬瓶を抱えるアレラーモの
震え続ける手をはっきりと照らす



隣には、椅子に寝かしつけたままのアンドレア

彼女は一晩中
自殺用の薬を飲む一歩手前で
思い止っていたのだ




実は、ウィッシュが来なかったら
アレラーモはアンドレアと共に
家のすぐそこにある両親の墓の前で
薬を飲むつもりだった


弟を抱き、父と母の遺骨の上で
痛みも無いまま天に昇る
理想的な逝き方だ




そうだ、彼女だって
もっと愛する弟と共に生きていたい

これから歩む道は
幸せで満ち溢れていると信じている


でも、たかが一人の人間に
この"世界"が救えるはずがない

あまりにも当然のごとく
彼が言ってのけたから
その時は信じて頷いたが
再び闇の中に取り残されると
非常に疑わしかったのだ

冷静に今思うと
あれは幻覚だったのかもしれない









―死ぬにはまだ早い


アンドレアの眠りを邪魔したら悪い
最後の最後で、彼を泣かせてしまうから

そう自分に言い聞かせながら薬を服用するのを
先へ、先へと引き延ばしていた



見つめているのは
震え続ける己の手

思考が何度となく反転して
無情にも迫り来る時間が
あまりにも早く感じた










いつしか日が高く昇り
もうその時まで10分を切っても
眠気を一切感じないほどに
激しい混乱で興奮している彼女は
アンドレアが目覚めるのを待ち続けていた








「ん…うむぅ…」


アンドレアの声だ

アレラーモは心臓を鳴り響かせ
彼の椅子の前に急いで立つと
ゆっくりと瞼を開く彼の顔を見る

何故、怯えたように心臓が鳴ったのか
それは彼女にも分からなかった


「…あれ、おねーちゃん?」

がたがたと肩を震わしたまま
無言で目の前に佇む姉の姿を見て
アンドレアは何か言い知れぬ恐ろしさを感じた


と、次に無邪気な子供は
アンドレアが両手で持つ小さな薬瓶に入った
たくさんのオレンジ色の丸い物を発見する


「あ!あめだ!」


それに夢中になったアンドレアは
姉が持つ薬瓶を横取りして
小さな手を蓋に掛けようとする



「ちょ、ちょっと!
 勝手にとらないで!」

思わずアレラーモは
弟から薬瓶を取り上げる

いつも彼を怒鳴っていたように
絹を裂くような声で叫んだ

驚愕したアンドレアは
口をあんぐりと開いて
今にも泣きそうな顔となった



「あ…」とアレラーモは焦った

何とか弟を泣かせないためにも
彼女は咄嗟に優しい声で言った

「…朝ごはんもまだでしょ
 そんなことしたら身体壊すから
 …ほら、飴なら後で好きなだけあげるよ」



「ほんと?ゆびきりげんまんだぞ?」

むっとして小指を立てるアンドレア

「…うん、お姉ちゃんとの約束」


哀しい笑顔を浮かべながら言ったそれが
心からの想いなのか
弟への優しい嘘なのか

それは、どっちでも良かった





傷だらけの爪が黒い
アンドレアの自慢の小指

弟の綺麗な小指に近づけたその時
窓からの光が一瞬で影になる



まさか、と蒼白くなって
窓に駆け寄り外の様子を確認するアレラーモ


アンドレアがきょとんとした表情を浮かべる中
後悔と、判断を躊躇った自分への怒りと共に
一瞬の内にアレラーモの幸せが
崩れていくように感じた





(To be continued...)




昼間、コメント投稿がどうしても「不正なコメントです」になってしまって、しょんぼりしながら帰ったのですが、今度は大丈夫かしら|ω・`)

アレラーモの激しい葛藤に、思わず胸を痛くしながら読みました。
世界の終わり‥‥一体、どれほどの恐怖なんでしょう。
そんなものを平静に受け止められる人が、一体何人いるんだろう。

ウィッシュが最後にアレラーモに何と声をかけるのか、そっちも気になって仕方ありません(´・ω・`)
どうか、これ以上誰も傷つきませんように‥‥。
だけど、世界を救うことで、それはそれでまた(周りの心ない反応などで)ウィッシュの中を切ない割り切れなさ、無力感が襲ったりするのかなあ、と思うと、それも心配です。

更新、待っています♪

土屋マル様へ

いつもコメントありがとうございますm(__)m

第二次世界大戦中、日本には神風特攻隊という
戦闘機ごと敵の船などに突撃する部隊がありました

ある一人の徴兵された青年は
特攻隊に抜擢されて、その時こう思ったそうです
「あぁ、俺死ぬんだな…」と
その人は怖いという感情は少しも無かったそうな
色々な経緯を経て、運よく彼は生き残りましたがね

世界の終わりと一人の死では規模が違うでしょうが
平静に受け止めると言うよりは
「もうあがいても無駄だ」と諦めるのが私なりの考察(-ω-

ふふ、ウィッシュのことが気になりますか?(・∀・
確かに彼は傷つきやすいですし
現実は私たちが思う以上に非情です

ですが彼なら大丈夫でしょう、きっとね

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