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2011 - 08/07 [Sun] - 23:34

たった一人の幸せが、愛した人の幸せに変わってゆく




【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力そのものを崇拝する変わり者だが、天然ボケでナイーブ


【アレラーモ=ピストイア】

茶髪のセミロングヘアを持つ、そばかすが特徴的な女の子、15歳
村人たちに大人気のパン屋をたった一人で営んでいる

村人に助けられながら弟を育て、寝る間も惜しんで金を稼ぐのは
優しかった亡き両親の為に墓を作るため


【アンドレア=ピストイア】

茶髪のボブカットを持つ幼い男の子、アレラーモの弟、5歳
いつも姉を手伝うつもりが、逆に姉の仕事を増やしている

それもそのはず、両親の顔は写真だけでしか知らなので
姉に構って貰いたい一心で彼なりに孤独と戦っているのだ




~あらすじ~

隕石が衝突するまで残り6時間

安息を求め、死の恐怖から逃れたいという切望と
たった一人の愛する弟と共に生きたいという希望
二つの間で激しく揺れるアレラーモは
迫り来る最期の瞬間まで弟の目覚めを待った

一方、隕石を亜空間に飛ばすつもりのウィッシュには
少し緊張するものの、「必ず何とかなる」という確信があった
同時に彼は、アレラーモが自ら命を絶たずに
生きていられるかどうか、半睡の状態で案じていた

日の出が見え、アンドレアは目覚め
それでもアレラーモは自殺用の薬を服用しない道を選ぶ
その瞬間、窓から差し込む陽光は全て黒に染まった…















日蝕のように全てが影となり
地面を突いていた小鳥たちは
脱兎の勢いで一斉に逃げ出す


絶望、後悔、自身への怒り、運命への嘆き
アレラーモの蒼褪めた顔は平静を装っているようで
白昼夢のように目前に浮かぶ
渦巻く感情にただ圧倒されているのみ




やはりあの魔法使いでさえ
力が及ばなかったのだろうか



異常に感づいたアンドレアは
椅子から飛び出して窓辺に駆け寄る

窓べりに指をかけたら
つま先を立てて背を伸ばし
影が覆い尽くす外の世界を眺める







「おねーちゃん!まっくろいくも!」


え?と正気付いたアレラーモ
空飛ぶ飛行機でも見つけたように
指を空に差して喜ぶアンドレア


弟に釣られてアレラーモは
この影の元、巨大な隕石を仰ぎ見る






…違う、あれは隕石ではない

旭日が輝くはるか遠くの空に
黒々とした巨大な空間が空間を裂いているのだ

蜃気楼のように宙に揺らめいて
不自然に楕円形に広がっている



超現実的に日常を切って現れたそれは
アンドレアを喜ばせ、アレラーモを唖然とさせ
次第に収縮されて消えて無くなる

無くなると同時に
シャボン玉が割れたみたいに
"透明な光"が天高く昇ったような気がした








―あの魔法使いだ
アレラーモはすぐにそう思った

いや、これももしかしたら幻覚かもしれない
今までと同じように、死の恐怖から目を逸らそうとして
完全に正気を失っているのかもしれない、しかし…








アレラーモは弟を抱き上げると
家から飛び出し
もう一度空をよく確認する

いつもと変わらない清々しい朝の光が
とても眩しくて目を細めた



夢に夢見る心地だったが
奇跡が起きた直後にしては
あまりにも静か過ぎる








町の様子が気になったアレラーモは
丸い目で辺りをきょろきょろ見回す
アンドレアと共に周辺の散策を始めた




家の窓を開いて
隣人同士の無事を言葉で確かめあう
怪訝な、しかし眼が輝いている母親たち

とりあえず助かったから良かったと
青年たちは両手を上げて互いに宙で打ち鳴らし
少女たちは両手を握って互いに大きく上下に揺らす


その一方、日替わりで子守りをしてくれた
「おばちゃん」とアンドレアが呼んだ内の
一部の人たちが町に見当たらない

薬を売ってくれた人は
アレラーモと同じ睡眠薬を
多くの人々が買ったと言われたのを思い出す

現に占い師の老人までもが
人々を恐怖に陥れたことに罪の意識を持ち
全てから逃げるように命を絶っているを聞いた



彼らのことを思うと不憫で仕方が無い
こうやって新しい日の朝を迎えられる可能性を
自ら失くしてしまったと考えると
そう、自分にも十分起こり得たものだった




複雑な気持ちになったアレラーモは
二度寝した弟を抱えている

黒い影に裂かれた草原の空を見るため
アレラーモは町外れの丘の所へと歩む

あの魔法使いと出逢った
小高い丘の方へ









「あぁ、なんだここにいたのか!」

背に投げかけられた安堵の声

振り返ると黒髪の魔法使いが
町外れの低い草々に足を踏み入れて
ほっとした表情で二人を見ていた

彼の声でアンドレアがむくっと動く




「あ…」と言葉に詰まるアレラーモ


ウィッシュが近づくと
アンドレアは可愛らしく手を振った
ウィッシュも笑顔で手を振った



「良かった、何ともなくて」
ふぅ、と気持ちを落ち着けるウィッシュ


その姿がアレラーモには変に思えた

「魔法使いさんが世界を救ったんじゃ…?」

ウィッシュ以外の何かの要因によって
隕石の衝突が免れたのかと勘繰る


「ん、隕石のことかな?
 一応あれは俺がやったよ
 亜空間っていう何にもない世界に飛ばしてね
 ほら、一瞬辺り一面暗くなったでしょ
 あの時丁度異世界への入り口を開いていたから
 太陽が隠れてしまったのさ」


頬を弛めて笑顔になるアレラーモ
彼の言葉を聞いたことによって
これまでの奇跡が真実であると確信したのだ




「良かったぁ!本当に良かったぁ!
 魔法使いさんが不安そうな顔するから
 きっと悪い知らせでもあるんだろうなと
 考えちゃいましたよ!」

「いやね、実のことを言うと
 君が何かの拍子で死ぬのが心配だったんだよ
 俺が見ただけでもたくさんの人が自殺したし
 パニックになって酷い目に遭う人も見た
 丁度7時になった瞬間、ショック死した人もいるね
 俺の魔法を隕石の衝突と勘違いしたせいかもしれない」


ウィッシュの言葉で
手放しでは喜べないのだと
少しアレラーモは反省した



「でも、君は生きてくれて良かった
 この先、もっと辛いことが
 待っているかもしれないけど
 それにも勝る幸せが君にはある
 だから、どうか挫けないで」


「はい…そうですね
 …よし、もっと喜んじゃおう」


アンドレアを強く抱きしめると
彼の温かみが全身に伝わってきた

今までよりも一番温かく
そして心の底から安心できた




照れたような表情になったアレラーモは
気まずそうに暫く考えた後にこう言う

「あ、そうだ!
 今度こそあたしから
 何かお礼をさせてください!
 パンでよければ、作りますよ!」

「それなんだけど
 出来るだけたくさん作ってくれないかな?
 わがまま言って悪いんだけど
 俺の家で待たせている人がいるからさ」

「家族、ですか?
 …はい!魔法使いさんの愛する家族の為なら
 あたし、いくらでも作りますよ!
 お礼してもしきれないくらいですから!」

「そう?ふふ、どうもありがとう」



「ぼくもてつだっていい?」

アンドレアが割って喋る

「手伝ってくれる?
 ならお姉ちゃんはパンを作るから
 雑巾絞って掃除してちょうだい」

「うん、がんばる!」

大きく頷くアレラーモの弟が
どこか頼もしく思えた





「さぁ、早速帰って準備するぞぉ!」

やる気溢れるアンドレアは
姉の腕から降りて
手を繋いだまま帰路を早歩きで急ぐ

その後ろを、微笑ましく見つめながら
ウィッシュがついていった





「…あの」

小さな弟と並んで歩いたまま
アレラーモが後ろの魔法使いを振り返る

「魔法使いさんのお名前
 まだ聞いていませんよね?
 教えてくれますか?」

「俺の?」

そういえばそうだったなと
ウィッシュは含み笑いをする





「俺の名前は、ウィッシュ=フローラ(希望の花)」





(The end)




じーん‥‥。
ほのかにウィッシュらしい「やり切れなさ」と「葛藤」と「気遣い」を見せつつの会話、それからアレラーモへのやわらかな励ましの言葉に、感動しました 。゚(゚´Д`゚)゜。
最後の一文、ウィッシュ=フローラという名前が、何とも誇らしく響きました。
そしてまさに、アレラーモの心に、目に見えない希望ならではの、大きな花を咲かせたんだろうなと想像したら、爽やかな読後感が余韻を残しました。

とってもとっても!
素敵なお話でした(*´ω`*)

土屋マル様へ

ウィッシュは、やり切れなかったと不幸自慢をするような
また悟ったつもりになって偉そうな口を叩くような
惰弱で傲慢な人間ではありません
何故なら、彼自身が多くの人から希望を貰い受け
応援し、支えてくれる人がいるのを知っているからです

だから、彼は今度は自分の番と言わんばかりに
アレラーモの心に希望の灯を灯したかったのです
さながら、両親が籠めた"ウィッシュ(wish)"という願いを
その身をもって体現するかのように


最後までお読みいただき、大変ありがとうございました(^^*
王道での直球勝負、つまりハッピーエンドというものは
実力がストレートに出るものだと考えております

もしかしたら「お涙ちょうだい」的な"寒い"ストーリーかな?と
一抹の不安を抱えながら執筆していましたので
マル様のコメントがこの上なく嬉しいですm(__)m

次回もまた、気が向きましたら
私の作品をご覧になってくださいね(・ω・*

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