make up,make-belive

2011 - 08/23 [Tue] - 21:53

同じように白く、同じように皺が無く、皆同じような顔




【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力そのものを崇拝する変わり者だが、天然ボケでナイーブ


【コーネ=フローラ】

芯が強く、聡明で笑顔が似合う金髪の女性
人助けに喜びを感じる純粋さの一方、我儘な一面も

事実上の奴隷だった彼女は、死の直前ウィッシュと出会った
幽霊となって今は彼に寄り添うように暮らしている


【レイティア=ノーノ】

人魚の少女、金髪、清楚な感じが漂い慎み深い
何時までも子どものままでいられるように、長年眠り続けていた

目が覚め、ようやく大人になることを受け入れた彼女は
ウィッシュたちと暮らす中で、心身共に成長してゆく


【シャミッソー=ヘッセ】

瑠璃色の髪を短く結えた、色白のエルフの優男
偉大な画家を目指して、気の向くままに放浪している

遠慮を知らず、所構わず大声をまき散らす迷惑者で
周囲からしばしば白い眼で見られるが、絵描きとしては一流















色づいた花々と背の高い木々に囲まれている
清閑とした泉に映るのは
真っ白な雲と水色の空

青葉から零れた雨の滴が水面に落ち
波紋はゆっくりと広がってゆく


すぐ傍でイーゼル(画架)に立ち向かい
絵筆を持ちこの景色を描くシャミッソー

長時間絵筆を握っていたので
とりあえず彼は肩が凝り背伸びをしてみる

朝からここにいるが
どれほど時間が経ったのかは忘れてしまった

気づけば絵筆を握る手に力が入らず
思わずそれを落してしまう


「むっ」とシャミッソーは地面に飛びつき
四つん這いになって辺りを探る

草花の根もとを捲りあげ
花弁の間をよく見て
もしや泉に落としたのではないかと
這ったまま水面を覘き込む



泉の水面には
シャミッソーの絵と同じように
綺麗な空と波打つ波紋があった


そこに映った彼の顔がとても似つかわしくない
泥だらけの頬と、乱れて艶のない髪が場違いに思えた




「どうしたシャミッソー?
 そんなことしても水仙の花は咲かないぞ?
 ナルシストは当て嵌まっても、美青年じゃないんだし」

通りすがりに横目で見ながら話しかける
中性的で黒い長髪を持つウィッシュ

「ウィッシュ!大変なことに気が付いたんだ!聞いてくれ!」


シャミッソーは咄嗟に振り返って
ウィッシュの両肩を掴み
激しく揺すりながら訴えかける

「たった今、ボクは偶然にも
 この美しい泉を覘き込んだんだ!
 絵筆が落ちてしまったかもしれないと気になってね!
 そしたら何が映ったと思う!?」

「…?幽霊か何か?」

「違うよ!ボクの顔だよ!
 泉がボクに『来るな!』と言ってるみたいに
 ボクの顔が映っていたんだよ!
 それなりにボクは容姿に気を遣っていたはずなのにぃ!」

「寝袋も使わずに野原で寝るのが原因なんじゃないか?」


シャミッソーが大声で喚くたびに
木の枝に掴まっていた小鳥たちが逃げ去って行くのが見える

シャミッソーに揺すられながら
呆れたようにウィッシュが相槌を打つこの光景も
もういつものことだと片付けられるようになった


「ウィッシュ!ボクは悔しい!
 偉大な画家の卵であるボク自身が
 この美景を汚す要素となったことを!」

(普段は『画家に美貌は必要ない!』と言ってるのになぁ…)

「そこでだウィッシュ!
 よくオカマと間違えられるほど
 中性的な容姿を持つキミに頼みがある!
 どうしたらそうなれるのか教えてくれ!」


シャミッソーは力強い面持ちでウィッシュを指差す

経験は薄いしそもそも本職ではないが
ウィッシュは催眠療法師でもあり
療法的な催眠を掛けるには
被術者からある程度の<信頼>を得る必要がある

不器用な彼なりの工夫として
老若男女問わず好感を持たれるような美貌
つまり中性的な容姿を維持しようと普段から努めているのだ


「えぇ…?でも、結構大変だよ?
 魔法を使っているとはいえ
 爪やささくれの手入れが必要だし
 顔を洗うついでに色々しないといけないし
 時と場合によっては化粧も…」

「うわ、男のクセに化粧するんだ…」
















「あぎええぇぇ!?待った!ボクが悪かった!
 だからその機械で電気ショックを与えるのはよしてくれ!
 ウィザードの名が廃る!」

「シャミッソー、それは違うよ
 未熟な魔法使いほど自分の能力を過信して
 機械とかを軽視するんだ
 まるで自分が神様になったように思いあがっている
 たとえ全てをゼロにしようが
 無意識下の望みを具現化しようが、ね」

「うえぇ!?ボクの話聞いてる!?
 弱者をいたぶるのはウィザードとしてって
 いぎゃああああぁぁ!」















「レイティア、パウダーファンデーションは
 顔の筋肉にそって伸ばしていくといいよ
 スポンジは、肌の表面に滑らせるようにすると
 ムラが出来にくいから」

「こ、こう…?」

「あ、スポンジ折っちゃダメ!」

ここはウィッシュの自宅のリビング

花瓶が添えられたテーブルに
丸いメイクミラーと多数のメイク用品が置かれている

窓からのそよ風で花柄のクロッシェレースと
コーネ=金髪カールヘアと
コーネよりは色が濃い金髪で
ウェーブがかかったレイティアの髪が靡いている





「なんということだ!
 レイティア!その百合のように綺麗な顔に
 化粧をする必要なんてあるのか!?」


シャミッソーは力任せにドアを開き
遠慮もせずに驚きの声をあげる


「多分社会勉強だよ
 大人になったときに必要になるからね
 それに一風変わったレイティアを見るのも
 楽しみだな、俺は」


彼に続けて部屋に入ったウィッシュは
律儀にドアを閉めながら
顔を顰めるレイティアが嫌味を飛ばすよりも早く言った

「よかったね、レイティア
 ウィッシュがとっても可愛くなったレイティア
 見てみたいんだって」

「あ、うん…?」

羨ましがるように囁くコーネ
シャミッソーを睨んでいたレイティアが
一転して顔に紅葉を散らした



「え?なんかボク悪いコト言った?」

シャミッソーは大げさに仰け反って
三人に目配せをする


涼しい顔で含み笑いをするウィッシュと
泣く人を勇気づけるかのような笑顔をしてみせるコーネ

レイティアはそっぽを向いて
今度は二つ折りにしないでスポンジを持つ


「何か言ってよ!ねぇ!ムシが一番ツラいんだよ!?」


耳を劈くシャミッソーの声が
レイティアの神経に障ったので
冷たい眼差しで振り返る

「ちょっと空気を読めるようになったと思ったら
 アンタ余計に酷くなっているわね」

「だ、だって!レイティアがそんなことする必要ないって
 ボクは真心から言っただけなのに!
 勝手にキミが怒っただけだろ!?」

「ふぅん…
 ロクにお風呂に入らないアンタには
 分かるはずもないわね」


言いたいだけ言うと
レイティアは再びミラーに顔を映して
慎重な手つきで化粧の練習を始めた


「分かった!よ~く分かった!
 ボクが外見に気を遣わないことが滑稽だと言うんだな!」


ウィッシュとコーネは
「誰もそんなことは言っていない」と
同じように思ったが
それをよそにシャミッソーは
何かを閃いて意気込んでいる


「見てろよ!あっと言わせてやるからな!」

すぐに彼はリビングから飛び出して
何処かへ消え去ってしまった


ようやく邪魔者が消え去ったと
胸を撫で下ろすレイティア





その後、コーネは念の為彼の夕食を用意したが
結局彼が家に訪れることはなかった

また狂気じみた集中力で絵を描いて
限界を迎えたらその場で野宿しているのだろう、と
三人は晩の食卓で異口同音に頷いた















目覚めたばかりで朦朧としている時
小鳥たちのさえずりを聴くのは格別だ

日差しが冷えた身体を暖めてくれるし
程よい明るさの日光がとても清々しいから


朝食をご馳走になるために
海岸の自宅からウィッシュの家へと
下半身を蛇行させながら
白い花畑の中の一本道を悠々と進むレイティア






突如、傍の花畑が不自然に揺れる
不審に思ったレイティアが尾びれを止めると
見知らぬ青年がモグラのように立ち上がって来た!

たまらず「いやああぁぁ!?」と
金切り声をあげるレイティア




「ははははは!どうだ!驚いたか!」
尻餅をついたレイティアは
得意げな顔をする見知らぬ男を見上げる
誰だか知らないが、とにかくタチが悪い



「ボクだよ!レイティア!ボ・ク!」

「…シャミッソー?」

聞き覚えのある声
しかし、彼の顔をよく見れば見るほど
それはシャミッソーとは似ても似つかなかった


泥だらけの頬は白く染まり
垢染みた小鼻は小奇麗にされ
口元は緩やかな曲線を描き
髪の色は潤っていた

正に眉目秀麗の言葉が相応しい彼の顔立ちは
とてもあのシャミッソーのとは思えない


「その通り!どう?これが本気を出したボクの姿!
 フッフッフ、驚いて声も出ないと言ったところかなぁ~?」

「…どうせウィッシュの魔法なんでしょ?」


わざと呆れたようにため息をついた後
レイティアは立ち上がって抑揚のない口調で返答する


「失敬な!
 画家のボクは美を衒うのに人の手は借りない!
 そう!当然ウィッシュですら
 このボクの晴れ姿を知らないんだ!
 時にレイティア!ウィッシュの姿を見なかったかい!?
 考え事があるらしくて、この辺りを散歩しているらしいけど!?」

「知らない」

「そうかそうか
 まあいいさ!いずれウィッシュには
 朝ごはんの時に見せればいい!
 待ち伏せして驚かせるのは、キミだけで満足さ!」

姿は変わっても
相変わらずのシャミッソーに
目を剥くレイティア


彼は自分に酔ったままに顔をほころばせ
いつになく弾んだ声だ

「じゃあまた後で!
 コーネには遅れてくると伝えておいて!」


まだ何かあるのか
シャミッソーは花畑を駆け出し
泉の方に行ってしまった





いくら秀麗な容姿になろうと
目障りな男は目障りのままだ


アイツが来る前に
アイツのパンを全て食べてやろうと
心密かに決心したレイティアであった















今日も清らかな泉には
ゆったりとした雲の流れが映っている
首を出してそれを覘き込むのはシャミッソー
なかなかの美青年が映っている



何度見ても飽きない
それが自分の顔なら尚更
この美しい風景に違和感なく馴染んでいる


いや、あまりにも彼の要望が光彩を放つので
むしろ他の全て霞んで見えた

泉が快くシャミッソーを迎え
ここをキャンバスに収めるに値すると
証明されたように思えた



何もかもが己を引き立てる要素とさえ錯覚した彼は
生まれて初めて見る己の姿に
恍惚の笑みを浮かべていた




ずっと泉に自身の美貌を映していたかったが
あまり遅くなると朝ごはんを食べ損ねてしまいそうなので
仕方なくシャミッソーは
ウィッシュの家に行くことにした


身体を支える両腕に
力を入れたその時
水際の礫土が崩れ落ちた!


シャミッソーは肝を冷やしたが、もう遅い
彼は無様にも顔の方から泉に滑り落ちてしまった!








「シャミッソー?いるなら返事をしてくれないかな?」


首を傾げながら、泉にウィッシュがやって来た


イーゼルその他が水際に放置されているが
肝心の持ち主の姿が見えないので不思議に思うウィッシュ



「ウィッシュ、もう先に食べちゃおう
 アイツが来ない方が
 ウィッシュものんびりコーヒー飲めるよ?」


彼の手に引かれながら歩くレイティアとしては
たとえコーネの頼みだとはいえ
シャミッソーを探すのを嫌がっている


「でもシャミッソー結構傷つきやすいタイプだから
 放っておくのはちょっとなぁ…」

「いいよ、そんな。自業自得でしょ」

「じゃあ、先にレイティアだけ…?何だあれ?」

「え…!?」


二人が泉の方を向いた先には
どういうことか絵具を溶かしたかのように濁った液体が
泉に混ざって広がる様があった


身構えるウィッシュと
彼の背に隠れるレイティア


次に二人の目に映ったのは
顔中の皮膚が酸で溶かされたかのような
悍ましい人型の何かだった!



「やあぁ!ウィッシュ!
 早く催眠術で眠らせて!
 きっと次の瞬間口が裂けて
 私たちを丸呑みしようとするつもりだわ!」

追いつめられ、絶叫するレイティアは
必死にウィッシュの身体にしがみついた
彼女の怪力に少し身悶えるウィッシュ

「…シャミッソー?別にこの泉に身を投げたところで
 きれいなシャミッソーにはなれないと思うよ?」

「…はぁ?」



シャミッソーの雰囲気を
それとなく感じ取ったウィッシュが
呼びかけたところで
レイティアは我に返って
泉に浮かぶ崩れた顔のシャミッソーを見る




「お!ウィッシュ~!ここにいたのか!
 どうだ!見違えるほど美しくなったボクの顔は!」

と、顔に描いた絵具が溶けたせいで
いつも以上に酷い有様になったシャミッソーが誇らしく叫ぶ





ウィッシュは片手で目頭を押さえ
黙って首を横に振り
彼の言った言葉を少しでも理解しようと頑張ってみた




「行こう、レイティア…
 どうも朝から魔法の論文の構成を練っていたせいで
 知らずの内に脳が悲鳴を上げているみたいだ…
 とりあえず、コーヒーを一杯…」


「そうね。自分の顔に絵具を塗って
 自分の顔を自慢するような男は
 言うこと為すこと嘘っぱちばっかりだわ」



二人は何の躊躇いも無くシャミッソーに背を向け
逃げるようにその場から去って行く



「待った!ボクの何が嘘っぱちだって言うんだ!?
 これこそがボクの本当の姿なんだ!
 たとえキミたちが信じなくても!」



未だ自分の顔が崩れたことに気づかないシャミッソーは
二人の背が見えなくなるまで
ひたすら戯言を投げかけるのみだった





(The end)




こんにちは、sunさん

新作ですね。
ウィッシュの意外な一面が…スタンガン?か何か使うんですか?

シャミッソーとレイティアの掛け合いがいいですね。

楽しく、読ましていただきました。

天邪鬼様へ

ウィッシュがシャミッソーに使った機会は
スターウォーズのライトセーバーみたいな
機械仕掛けの非殺傷の日本刀です
コンピューターに使えば機能停止に追い込み
生物に使えばビリビリ痺れます
テンポが悪くなるので、本文の方では
申し訳ありませんが省略させて頂きましたm(__)m

シャミッソーは、所謂いじられキャラですからね
ウィッシュは彼を思う存分いじめています
レイティアは…生理的に受け付けないだけのようですね(-ω-;

次作がいつになるか見通しがつきませんが
どうか気長にお待ちになってくださいね(・ω・*

sunさん こんばんは☆”

楽しいお話でした♪
シャミッソーは頑張ったのに最後は残念でしたね(笑)

お化粧って女性にとっては戦闘態勢にはいる儀式みたいな・・・
少し大げさですが、そんな感じですね
「今日も1日頑張るぞ!」みたいな(^^)

すっぴんの時は素の自分でいられるから気楽です♪

最近は男性もお化粧をするようですが・・・賛否両論ですね。

優さんへ

髪を整えたりするだけでも
何故か気合は入ってしまいますからね
それがお化粧の場合なら尚更(`・ω・´

男性が化粧をするようになったのは
ビジュアル系バンドのノリなのかな?
あるいは、コスプレと同じ感覚とか?
そういえば、男性からみた女性のメリットは
着れる服などが多様なのが羨ましいとか…
女性の苦労を何も考えずに、ですが(^^;

シャミッソーは…ねぇ
あの程度ではへこたれないと思いますよ
ちょっといい気分に浸っただけでも満足でしょうし(-∀-

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