to the sea Part4

2011 - 11/20 [Sun] - 20:06

深海に眠る私たちの祖先




【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力そのものを崇拝する変わり者だが、天然ボケでとても繊細



【レイティア=ノーノ】

人魚の少女、金髪、清楚な感じが漂い慎み深い
何時までも子どものままでいられるように、長年眠り続けていた

目が覚め、ようやく大人になることを受け入れた彼女は
ウィッシュたちと暮らす中で、心身共に成長してゆく



【シルビア=フローラ】

褐色の肌に長い銀髪が燃えるように映える、活気溢れる女性
男勝りな性格ながら、礼節を弁え慎ましの心もある

獣のように鋭い五感を持ち、自然に関する知識は深く
詩のない魔法の歌声で荒ぶる動物たちを従えるワイルドレディ



【ルナリロ=アジソン】

自然を愛する大富豪に雇われた、壮年で礼儀正しい執事
温暖な離島の管理を任され、観光地として経営している

美しい自然を守るためにその身を削って行動しており
海や島を汚す者には容赦がない、強面な一面もある






~あらすじ~

海岸を歩み、旅館に到着した
ウィッシュとレイティアの二人は
シルビアとルナリロに迎えられる

ウィッシュは久々の再会から
楽しげなやり取りをする一方
レイティアは人魚という立場もあって
どうも場の空気に馴染めなかった

やがてレイティアを除く三人が
それぞれの仕事を始めることになった際
レイティアは感傷に浸りたいがために
人気のない砂浜で波の音を聴いていた

目の前に広がる大海原は
レイティアが見たどの海よりも美しかった
やがて彼女は、海に誘われるかのように
妙な高揚とともに海中へと進んでゆく















何もかもが懐かしい
目に映る全てが新鮮だというのに



レイティアは、海底に対して身体を水平にし
下半身をしならせて氷上を滑るように泳ぐ


人魚は水中でも息ができる
レイティアは、この海の『空気』が
とても美味しいと感じた

暖かい海の中は
ガラス窓越しに差し込む光のように
太陽の輝きに照らされており
魚群はそれを七色に彩っている

無数にある水泡は
逆光線を辿り昇りゆく

サンゴ礁が隙間なく群生するが
海の底を更に奥に行くならば
やがて海は藍色に染まり
海底は緩やかな坂となって
更に奥深くへと行き着くだろう




広大なサバンナを
素足で駆ける少年のように
レイティアは縦横無尽に
海の中を泳いで回った


無邪気に魚群を追いかけては
透明なクラゲと共に波間に揺れて
珍妙な生物が砂に潜るのを観察しては
サンゴ礁に住まう生物に手を伸ばしてみる



幼い子どもに戻ったかのようだった

身体を動かして疲れることすら
とても楽しいと心の底から思える

未知なる土地や生物を恐れず
好奇心のまま突き動かされる


苦悶や困惑など
今さらどうでもよい

この母なる海で
気ままに生きる者たちを見れば
先ほどまでの自分が
いかに馬鹿らしいことに
囚われていたのかを実感できる


決して刺激で誤魔化しているのではない
遠い昔…かつてどこかで謳歌したはずの
切ない安らぎがそこにあった










やがて、遊び疲れたレイティアは
隆起した岩の上で仰向けになる

昔はよく、海上の岩で日光浴をしながら
日が暮れるまでひと寝入りしたものだった


外では暑かった日光も
水中の中ではちょうどよい
日向ぼっこをするのに最適だ




波間に揺れる空を仰いで
時々魚群が雲のように日光を遮って
少しするとまた逆光が全身に降り注ぐ


心音が聴こえるほど静かで
水が恋人のように寄り添って



―間もなくレイティアは
うとうとと眠りに落ちてしまった















波が岩にぶつかる音
ウミネコの鳴き声



レイティアはその眼を開く
気が付くと彼女は海上に居た

見渡す限り海が続き
ただ一つ、自分が仰向けになっている
この小さな岩だけが孤島のようにあった



おかしい、さっきまで私は
海の中で昼寝していたはずなのに

彼女は朦朧とした意識の中
仰向けのまま周囲を見渡す

隣では、灰色のアザラシが
レイティアと同じように寝そべっていた

そのアザラシの隣には
どういうわけかラッコもいる
むく毛がとても愛らしい

片目だけを閉じたイルカまで
傍で横になっている
長時間陸上に居て平気なのだろうか?


しかし、レイティアの眼前には
朝もやがかかっているかのようで
思考は鈍り、身体も動かすことができない

それを不思議とも思わず
危険だと感じることもなく
レイティアは切れ切れの意識のまま
うつらうつらと瞼を半開きにしていた








「レイティア!またこんな所にいて!」


聞き覚えのある柔らかい声
ハッと目を見開くレイティア

夕焼けを背にした『彼女』は
長い影をレイティアに落とし
ご立腹な様子で腕を組んでいた


閉じていた目は
今にも落ちそうな
この夕日さえとても眩しい

しかし、赤い空に映る
脹よかなシルエットを
確かにレイティアは知っている



「…ママ?」

やがて目が夕焼けに慣れて
その姿がはっきりとなる

それは腹を立てた表情をしている
レイティアの母親だった


母親はレイティアと似て
水中で濡れても嵩張らない
薄着で大きな胸を隠す他は
一糸纏わぬ人魚であった



「ママ?じゃなくて!
 もう日が沈むでしょう!
 いつもあなたはそうやって
 ちょっとだけと言いながら
 長い時間ここに寝ているし!」

母はいつもそうだった
少しくらい遅れようが
別に家出するわけでもあるまいし

「だって…
 一人でお昼寝するよりも
 『仲間』が居た方が気持ちいいから…」

レイティアが少しむくれながら言い訳すると
母親は組んだ腕と張り詰めた肩を落とした

「気持ちいいって…?はぁ、呆れた…」


母親は、レイティアが『仲間』と言った
未だ寝そべったままの
アザラシとラッコとイルカに目を遣る


「…まぁ、あなたは魚の子で
 しかも人魚の知り合いもあまりいないから
 こうして一緒に居たい気持ちも
 分からなくはないけど。
 だからって、いつまでも家に帰らないのは
 とてもいただけないわね」

「…ごめんなさい、ママ」


大きく息を吐きながら
再度腕を組んで母親は後ろを向く

夕日の中、幻想的に映える母親は
海に宿る優しい女神のようであった


「さっさと帰るのよ。
 海が冷たくならない内にね」

「はーい」

レイティアが返事をすると
母親は微かに笑みを作ってみせた

そして、ゆっくりと海水に潜り
レイティアが住む海底洞窟へと
一足先に帰ってゆくのであった






そう、これは夢だ

遠い昔、レイティアの記憶にある
何気ない日常の断片の一つ


数の少ない人魚の代わりに
姿の違う生き物たちと
心で触れ合った時代のこと

『言葉』で語り合うことは少なかったが
それでも、昔のレイティアは
何一つ孤独を感じたことはなかった

彼らも、元を辿れば同じ祖先
皆が自然の一部だと
レイティアは知っていたからだ


それは、人の社会で
『人間』として生きるようになった為に
彼女の知らぬ間に見失ったのかもしれない

仕方がなかったとはいえ
小さな世界に閉じこもる内に
彼女の視野も、自信も
全てが狭まってしまったせいだ


だが、やっと思い出した

この母なる海からの贈りもののおかげで
もう当分迷うことはない

再び憂愁に囚われたとしても
何度でもこの海に還ればよい










満たされた心地で
レイティアは夢の続きに浸る


波の音が心を満たし
夕焼けが身体を照らす


そして、寄り添うように
隣にいるアザラシを
抱き締めようと両手を伸ばす




瞬間、アザラシは急に動きだし
レイティアの腹に圧し掛かった

アザラシは、可愛らしい黒目で
レイティアの顔を覗き込むが
彼女は痛みでそれどころではない


唸り声を出そうにも
胸が潰れて息をすることすら困難だ

レイティアは必死でもがくが
アザラシは彼女の心臓を締め付けるばかり


更にトドメを刺さんばかりに
アザラシはレイティアの顔を顔で潰す

アザラシの顔の下になったレイティアは
手足をバタつかせて必死に助けを求めて
声にならない声を震わせている









「ダメよ!お兄ちゃん!
 意識が全然戻らない!
 心臓マッサージも
 人工呼吸も効き目なし!」

「くっそ…!
 もう手遅れなのか…!?」


砂浜で安らかな夢を見ているレイティアは
シルビアに荒々しい蘇生術を施行されていた

すぐ近くでウィッシュが膝を落とし
彼の隣にはルナリロが険しい顔をしている


「無理もないわ…。
 ワタシが海の中で
 『溺れた』レイティアを見つけた時には
 もう全然動かなかったもの…」

「…俺が悪いんだ!
 レイティアが塞ぎ込んでいたのは
 もうこうなる前から分かっていた!
 もっと、話を聞いてあげるべきだった…!」

「ウィッシュ様!
 どうか涙をお拭きになってください!
 レイティア様は、必ずや助かります!」

「そうよ!希望を持って!
 お兄ちゃんの名前も希望(wish)でしょ!」

「レイティア…くぅ…。
 なんで…自殺なんか…」



三人とも、あまりにうるさいので
レイティアは夢の世界から
強引に引き戻されつつある

瞼を開く前に、手をピクンと動かしたのを
一番近くにいたシルビアが目撃した



「動いた!?死後硬直なの!?
 …もうこうなったら最後の手段しかないわ!」

自分の力量では万事休すと踏んだシルビアは
全てを託す思いでウィッシュに言う

「電気ショック!電気ショックよ!
 こうなったらダメで元々!
 やるしかないわ!お兄ちゃん!」


ウィッシュは無言で立ち上がり
気力を振り絞ってレイティアに歩み寄る

「チクショウ…!
 やらなくても、失敗しても
 どうせ死んでしまうんだったら…!
 頼む、レイティア…!」


ウィッシュは力加減を弁えず
魔力を右手に集中させて振り上げる


電気が弾ける音を聞いて
レイティアが目を覚ますと
なんと、サッカーボールくらいの電気の球が
ウィッシュの右手に収束され
今にもそれをレイティア目がけて
振り下ろそうとしていた


「え…?ウィッシュ?
 どうしたの…って!?
 ちょっと!やめて!イヤアァァァ!」





(The end)




こんにちは、sunさん

壮絶なラストになりましたね。
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
ならないといいですが…
手にした答えを忘れてしまっては、かわいそうですから。

楽しく読ませて頂きました。

天邪鬼様へ

多分問題ないと思いますよ
意識は再び夢の世界へ
飛ばされる程度のことはあるでしょうがね

手にした答え…というよりは
実はレイティアは元々知っていたんですね
それを『母なる海』が思い出させてくれた
そんな、憂愁に囚われた少女のお話でした

お読みになっていただき、ありがとうございました
新しい作品を創り上げたときは
是非ともご覧になってくださいね(^^*

えぇ!?

ここで終わるだなんてっ!!(笑)
大丈夫ですか??レイティア、また意識飛んじゃうんじゃ…@@;
ウィッシュ!すとっぷストップ!!(笑)

3話での新たな出会い。
シルビアの快活さとルナリロの生真面目さの凸凹コンビ(ではないけど。笑)に笑わせてもらって^^
4話でレイティアの過去や気持ちに、胸が痛みました。
お母さん、素敵な人ですね。厳しさと優しさを兼ね備えた、理想的な母親像です。いいなぁ。

現実では溺れていたレイティア。
人魚なのに??どうして??何かありそうですが…@@;
とにもかくにも。
どうにかウィッシュの攻撃(笑)をかわすんだー!レイティアーー!!><;

chacha様へ

レイティアは溺れていませんよ~
一応、『人魚は水中でも息ができる』と記述しました
ウィッシュたちが勘違いしているだけです
普通、水中で昼寝なんてしませんからね(-∀-

『母なる』海に身を委ねて
まどろみの中で邂逅した『母親』
『母性愛』に溢れた彼女は
レイティアのわだかまりを解き放ち
やがて純粋なままのレイティアに還る
…まあ、『母なる海からの贈り物』ですね

それとレイティアは問題ないと思いますよ~
暫くウィッシュと口を利いてくれなくなるでしょうがね
ただ今、最新作を更新いたしましたので
宜しければ元気に駆け回るレイティアの姿(!?)を
是非ともご覧くださいね(^^*

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