シャミッソーのやりたいこと Part1

2011 - 12/27 [Tue] - 17:47

優れた画家は自然に学び
劣った画家は画家に学ぶ




【ウィッシュ=フローラ】

無邪気さとニヒルさの間で気ままに生きる世捨て人
催眠療法のために両性から好感を持たれる中性的な容姿をする

極限まで研ぎ澄ました色のない光<魔力>を自由自在に操り
魔力そのものを崇拝する変わり者だが、天然ボケでとても繊細


【コーネ=フローラ】

芯が強く、聡明で笑顔が似合う金髪の女性
人助けに喜びを感じる純粋さの一方、我儘な一面も

事実上の奴隷だった彼女は、死の直前ウィッシュと出会った
幽霊となって今は彼に寄り添うように暮らしている


【レイティア=ノーノ】

人魚の少女、金髪、清楚な感じが漂い慎み深い
何時までも子どものままでいられるように、長年眠り続けていた

目が覚め、ようやく大人になることを受け入れた彼女は
ウィッシュたちと暮らす中で、心身共に成長してゆく


【シャミッソー=ヘッセ】

瑠璃色の髪を短く結えた、色白のエルフの優男
ウィッシュの家を拠点とし、気の向くままに放浪している

遠慮を知らず、所構わず大声をまき散らす迷惑者で
周囲からしばしば白い眼で見られるが、絵描きとしては一流















いつものように
フローラ宅のリビングで

いつものように
ウィッシュとコーネとレイティアが
三人で優雅にケーキを食べているとき

しかし、いつもよりも
シャミッソーが大きな声で嬉しそうに
駆歩で疾走する駿馬のように
足音を鳴らす間もなく乱入してきた



「三人とも聞いてくれ!
 とうとうボクの実力が
 世の中に認められる時が来たぞ!」

シャミッソーは、手紙を見せびらかしながら
身体を上下に揺らしながら叫んだ


「招待状…美術学校からって…!?
 教師として招かれたの!?
 すごい!シャミッソー!
 とっても名誉なことじゃない!」

一番近くにいたコーネは
手紙に書かれていた文章を読むと
驚きを隠せずに彼と同様に声を大にした


「どうだ!驚いたか!
 これでボクをただの流浪人だと
 バカにする奴はいなくなるぞ!」

手紙を宙に放り投げ
シャミッソーは両手を伸ばす
万歳のポーズをとらずにいられなかった


(やった!これでもうコイツを
 視界にいれなくて済むわ!)

レイティアも笑顔になるのを我慢できない

「ん?シャミッソーが?
 …まあ、当然と言えば
 当然の成果だろうけど…」

ウィッシュは僅かに怪訝な表情をする

「…面倒じゃない?
 絵を描く時間も減るし…」

紅茶を口に含みながら
ウィッシュは低い声で言う

「それはボクも思ったよ。
 それは、ボクにとっては
 とても我慢ならないことだ。
 でもね、ウィッシュ!
 教師として、授業の中で
 ボクの信念を誰かに伝えられるなら、
 それはボクの作品を見てもらうのに
 匹敵する喜びとなるだろうさ!」

「なるほど…。一理あるね…」

嫉妬しているわけではないようだが
ウィッシュはシャミッソーと
目を合わせようとしていない


「見直したわ。才能あるのね。
 きっと、学生たちからも慕われる
 いい教師になれると思うわ」

レイティアは、棒読みに近い調子で
シャミッソーの決意を後押しする

「だろ!キミもそう思うだろ!
 ボクは誰もが認める芸術家なんだ!
 コミュニケーションが苦手で
 よく人に誤解されてばかりだったけど…
 でも!明日からはボクの信念を
 あまりなく伝えられることができるんだ!!」


彼は、歓喜に打ち震えながら
成功者がする嫌味な高笑いをする

レイティアは、コイツといた今までで
今のコイツが一番ウルサイと感じたのであった















例えば、校門一つをとっても
石垣に置かれた獅子の彫像は
威厳を肉体に内包し、睨みを利かせ
この美術学校の権威を一端を示している

その石垣に囲われた敷地の大半を
生徒たちの『作品』が占めている

石畳には、獅子の貌に創られた窪みが
中庭には、偉人に倣って造った彫刻が
噴水には、幼い天使を模った石の像が

これらの風景は、美術狂いな好事家の
豪華絢爛たる大屋敷にも似ている
学校、というよりも美術館だ



「―さて、シャミッソー様もご存じの通り
 獅子、まあライオンですかね。
 ライオンは古くから特別な獣として
 多く崇拝の対象たりえました」


不恰好に長い黒髪を持つ
痩せ細った眼鏡の男は
校門の彫像を指差す

美術品に塵一つさえ付着するのを
病的に恐れる余り
小奇麗な白い手袋を履いた指で


彼はこの美術学校の教職員で
シャミッソーは彼の後に大人しく従っている

この教職員は、教員として迎えるシャミッソーに
案内という名目で専ら衒学に徹している


「ライオンと言えば
 スフィンクスなんかが有名ですね。
 王の象徴にして、知識の守護者です。
 これに限らず、権力や王の象徴だというのが
 西洋文化共通の認識であるのですがね。
 あぁ、そのルーツになりますが、
 古代アッシリアでは既に…」

「さっすがぁ~!知識が深いね!
 キミが創った作品を見てみたいよ!
 きっと単なる自己満足で終わらない
 素晴らしい作品なんだろうな!」


シャミッソーが案内人の話を遮って
子どものように目を輝かせながら
(彼にしては)控えめな声で言った

特にシャミッソーに悪意はないのだが
案内人は話の腰を折られたことが
甚だ不愉快である模様

「ぐん!」と咳払いした案内人に睨まれて
シャミッソーは珍しく焦った



この案内人の機嫌を損ねることだけは
いくら傍若無人で名の通っている
シャミッソーと言えど許されない

ようやく、長い歳月を積み重ねた上に
渇望していた栄誉と居場所を目前にして
それを失うようなことだけはあってはならない


彼なりには気を付けていたのだが
早速ミスを犯してしまうとは

以後、このようなミスはしないよう
答えの一つしかないテストに答える生徒のように
シャミッソーは言葉に気を付けなければならない



案内人は「まあいい」と言わんばかりに
ニヤリと口元を吊り上げると
今度は媚びたように高い声で返答した


「…この獅子は私の拙作でありまして。
 いかがですか?出来栄えの方は?
 宜しければ、シャミッソー様から
 ありがたい言葉を一つ頂きたいのですが…」

もう答えは知っている、と
上目遣いで狐のような目をする案内人

「えぇ~?評価なんて…。
 ボクは彫像は創らないし、
 知識の方もあんまし…」

困惑したシャミッソーは
そこで発言を終えるのだが
案内人は何かを期待するように
じっと口を噤んでいる

「むむ!黙ったままなのは
 礼儀知らずだと言われるのかな?
 ボクの眼からすれば、この彫像は
 学校の威厳を象徴するのに
 ちょうどいいと思うよ。たぶん…。
 キミもそういう意図で創ったんだろうし…」


すると、案内人は満面の笑みを浮かべ
儀式のように恭しく、そしてわざとらしく
「ありがとうございます」と言い、深く頭をさげた


「そうでしょう!この偉大な学校の校門ですから
 その栄誉に泥を塗るようなことがあっては、
 代わりに私の首が校門に晒されてしまうものです!
 しっかりと古代アッシリアの発掘品を観察して
 見るも麗しい作品に仕上げましたからね!
 当然と言えば当然でしょう!」

「そっか、良く分からないけどスゴいね…アハハ…」

とりあえずシャミッソーは笑った


「ささ!もっと奥の方へ参りましょう!
 目が潰れんばかりの美術品が
 この学校には永久保存されていますよ!」

案内人はその手のひらを
学校のエントランスの方に差し出した

「うん!キミの作品もたっぷり見せてね!」

「おおっと!残念ながら!
 私の作品はこれ限りで御座いまして…」

「えぇ!?美術教員でしょ!?」

シャミッソーは思わず大きな声で叫ぶ
一応、そうしないように気を付けてはいたのだが

「いやぁ~!教員ともなると
 『本職』の創作活動に費やす時間が
 消えてしまいまして…。
 ですが、愉快でもあるのでして。
 生徒たちに美術の威光を
 己が口で示すというのは!」

「そ、そっか…。
 でも、驚いたなぁ。
 たった一つなんて」


つまらなさそうだな、と
シャミッソーは内心で思った



「では、今は講義の時間となりまして!
 まずは教室の方からご案内いたしましょう!」


足早に先を行く案内人に続いてを
シャミッソーは大人しく歩いた





シャミッソーと擦れ違う
奇抜な風采の学生達


絵具で汚れた上着を着たまま
サンドイッチを木のベンチで頬張る
変な髪型をした女子のグループ

男子の群れは、研究の為だと言って
美術とはあまり関係のなさそうな
雑誌や漫画を寝そべって読んでいる
―とてもだらしない格好だ



講義が無い学生らは
各々の美術論を語り合っているが
その張り上げる下品な笑い声と
節操のない早口言葉と言ったら
とても聞くに堪えないものだ

ましてや、その話の内容には
他者を見下す傲慢さと
己の論が貶された怒りとが
露骨に感じられるのだ


勿論、そのような連中は
この全体の中のごく一部なのだが


シャミッソーが遠くに目を遣ると
学内の敷地から見える青い山を
黙々と描き続けている人々が居た

『同族』というものはよく分かる者で
「アイツらは才能ありそうだね!」と
彼らの持つ風格から感じ取ったが
そういう者は大抵一人か
友人と話していても真剣な顔もちでいる





案内人に導かれて校内に入るシャミッソーは
傍目からだと何か考え事をしているように見える

どうやらここは
彼がイメージしていたものとは
想像以上に違っている場所であるらしい





(To be continued...)




こんにちは、sunさん

シャミッソーと教師、イメージ的に1番遠い所の存在の様な…
面白い展開ですね。

続きに期待します。

天邪鬼様へ

そうですね~、ウィッシュたち三人も多分
「教師になれっこない」って見くびっているでしょう

ですが、教師に向いていないと分かっただけでも
それはそれで収穫があったというものです(・ω・*

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