弱肉弱食

2012 - 07/23 [Mon] - 22:27

 「いじめ」に加担している子どもたちは、「次に自分が標的になるのではないか」という不安やおびえを抱え、「とりあえずこの子をいじめているうちは、自分はいじめられることはない」と目の前の”いけにえ”を激しく攻撃することで、その不安を隠蔽している場合が多い。
                  ―『「悩み」の正体』 香山リカ




【ウィッシュ=フローラ】
 黒のジャケットをマントのように羽織り、銀色の幻想的な紋様のついた白服をその中に着る、中性的な容姿の男。極限まで研ぎ澄ました純粋な魔力(=色のない光)を操り、また知的だが穏やかな気質を持っていることから、”色のない天使(innocent angel)”という通称で広く知られている。
 一人の”人間”としての価値観を認めてもらえず、世の中に虚しさを覚えた彼は、”白い楽園”と呼ばれる小さな世界で、愛する者と悠々自適の生活を送っている。一方彼は魔法の研究で生計を立てているので、”地球”を含む多種多様な世界を訪れ、数多くのものと出逢ってもいるのだ。


【竜人族(ドラゴニュート)の男の子】
 エキゾチックな衣装を身に纏った、竜人族の子ども。小さな緑色の翼を持ち、銀色の髪の毛からレモン色の二本角が生えている。
 突如として言葉の通じない人間社会に現れた彼は、いずれ人々の畏怖を集めるであろう強大な力の片鱗を最大限に駆使して、空腹を満たすために都会に迷惑を振り撒いていた。


【ブレヤン=ブーダン】
 全身黒づくめでオールバックの青年。魔法使いとして優れた血筋を引く貴族たちの嫡子。優れた剣技と、天賦の風魔法を融合させた奥義は全てを切り裂き、悪人に容赦のない性格も相まって”英雄”と呼ばれている。過激なやり口に対する批判さえ跳ね除けて、孤独も厭わず悪人を”教育”するその生き様に憧れる青年も多い。


【傍観者たち】
 ブレヤンに同調する者たち。少なくとも千人はいる。男女の数は半々。傍観者たちの多くは青年で、戦いの素人である彼らはバッドや火炎瓶で武装する。ブレヤンが悪人を裁く時、数に物を言わせて犯罪者を攻撃する時、彼らの目はとても活き活きとする。






 その幼気な銀髪の男の子は、緑色の竜翼とレモン色の二本角を生まれつき持っていた。竜人族(ドラゴニュート)の男の子は数日前より人間の住む都会に姿を現し、空腹を満たす為に食べ物をくすねていたので、ちょっとした厄介者として知られていた。

 人間の警察が追えば、微弱とはいえ火を吐いて抵抗するし、壁に追い詰めたと思ったら小さな翼でパタパタと空を飛んで逃げ出すのだ。盗みを働くとは言え、相手は子どもなので、警察としては出来るだけ穏便に済ませたかったのも関係しているのだろう。母親の復讐を恐れてのことかもしれない。そんな警察に、口だけ達者な市民らは”無能”とレッテルを貼った。

 秘境に住むと言われる竜人族の男の子が、専ら食べ物泥棒のみに専念していることから推測するならば、母親と空を飛んでいる最中に迷子になってしまっただけなのかもしれない。あるいは口減らしの為に、人間という異邦の地に捨てられたのかもしれない。もしかしたら、身寄りがない故の止む無き犯行なのかもしれないが、それは男の子の秘められた能力を恐れる人間たちにとってはどうでもいいことだ。





 ある夜。突如、忌まわしき竜人族が潜むと噂を聞きつけた”英雄”のブレヤンと、彼に同調した青年たちが、男の子を標的にこの都会で小一時間も逃走劇を繰り広げた。その末、男の子はレンガ造りの時計塔の広場で千人ものバットや火炎瓶で武装した人間どもに取り囲まれてしまったのだ。小さな翼で羽ばたく気力も使い果たした男の子は、もはや袋の鼠だ。



 時計塔にへばりつく竜人族の男の子は、傍観者たちの内何人かが持つサーチライト代わりの懐中電灯で照らされている。リーダー気取りのブレヤンだけが、輪の中央に歩を進めながら男の子を睨むと、男の子は恐怖で激しく震えだした。全身黒ずくめの男ブレヤンが、銀の剣を鞘から抜くと、その切っ先を男の子の鼻の先にじわじわと運んだ後に言い放つ。

「子供とて、盗みが悪事とは承知している筈!天誅も下さず野放しにするならば、いずれ模倣犯でこの都会は溢れ返るだろう!」
 ブレヤンの言った言語は男の子にとって全くの未知だったが、彼が此方に何をするのか、抜身の剣を見れば子どもでも容易に想像できる。ブレヤンは男の子を殺める気はないものの、猛獣を鞭で調教するかのように、剣の先端で無数の切り傷を刻もうと企んでいた。

「まずは…右手から教育してやろう!」
 ブレヤンは男の子が逃げ出さないように腹部を片足で壁に押し付け、恐怖を植え付けるためわざとゆっくり切っ先を男の子の右手に近づける。竦みあがり、涙を流すしかない男の子。鈍く光る切っ先の焦点の先には、男の子が”罰”を加えられるのを今か今かと待ち侘びている”英雄”の仲間たちが、何の疑問も持たずに立ち尽くしている。少なくとも千人は傍観者がいるはずだから、誰か一人くらいこの”英雄”を制止してくれてもいいと男の子は期待したが、”英雄”の仲間たちはこれから起こるべき事柄に何の疑問も持ち合わせていないようだ。
 剣の切っ先が男の子の小さな手の甲に突き刺さろうとした、次の瞬間―。



「ぐはぁ!?」
 千人は下らぬ傍観者たちの目の前で、突如ブレヤンは後方に半メートルくらい吹き飛ばされ、同時に男の子が消えて無くなった。ブレヤンは吹っ飛ばされた衝撃で放した銀の剣を急いで拾うと、剣を構えたまま四方八方を見回し男の子を探す。傍観者たちは不可解な光景に騒ぎ立てながら同じく消えた男の子を探し、特に懐中電灯を持つ者はビルや車道や木の陰をくまなく照らす。


「上だ!時計塔の上にいるぞ!」
 傍観者の一人が大声で知らせながら、懐中電灯の光を塔の時計盤に向ける。それに続いてブレヤンと傍観者の視線、そして他の懐中電灯が同じ所に集中すると、白い時計盤の前で、男とも女ともつかぬ人間が片腕に震える男の子を抱いていた。
「ウィッシュ=フローラ!」
 ブレヤンがそう叫ぶと、強気に構えていた傍観者たちは一斉にどよめいた。黒いジャケットを夜風にはためかせ、どこか違和感のある美貌を持つウィッシュは、空いたもう片方の手で男の子の頭を撫でている。
 数人が掲げていた火炎瓶やバッドを降ろすと、それに同調するかのように傍観者たちは次々と戦意を喪失し、臨戦態勢を解いた。ただ一人、ブレヤンだけが、話しかけられるのを待っているかのように余裕で含み笑うウィッシュに剣を向けていた。

「拡声器を貸せ!」
 傍観者の内何人かは拡声器を持参していたが、彼らの間で誰がウィッシュの眼を掻い潜ってブレヤンにそれを渡すか、少しの間押し付け合っていた。
「早くしろ!誰だっていいだろ!」
 ブレヤンに怒鳴られたので、拡声器を持った人々の中で一番気が弱そうな青年が、仕方なくブレヤンの方に駆け寄って拡声器を渡す。


 ブレヤンは拡声器を通して、時計盤の前で飄々と構えるウィッシュに警告する。
「ウィッシュ=フローラ!その問題児をこちらに渡せ!さもなくば貴様の身の安全も保障しない!」
「…この子が何をしたって言うんだ?」
 テレパシーを併用して、ウィッシュは諭すように返答した。
「窃盗、器物破壊、傷害罪、その他諸々だ!全て法に抵触している行為だ!よって私が”罰"を与える!安心しろ!警察のような生温い尋問では済まさんから、必ずその子供も改心するだろう!」
「法律、ねぇ…。だったら法律に免じてこの子を許してあげてよ。一人前の判断能力がつかない子どもは罪に問われない、という法律でね。そもそも人間の法律じゃあ裁けないよね?」
「噂に違わぬ惰弱ぶりだな、ウィッシュ=フローラ!年端もいかぬ人間は獣と等価!言葉では理解すまい、体罰こそ相応しい!それは竜人族とて同じこと!」
「そんなことしたら、子どもの”考える能力”を奪ってしまうよ。”恐怖”で押さえ付けると言うことは、その”恐怖”が取り除かれたら再び犯罪を犯してしまう可能性が大きい。取り返しのつかないことを予防する際は例外として、君のやり方は一時しのぎでしかない」
「貴様…!あくまで減らず口を叩く気か!いいだろう、警告はした!」


 ブレヤンは傍観者たちを振り返り、拡声器で指示を出した。
「奴に攻撃しろ!子供を巻き込んでも構わん!」
 すると、傍観者たちは互いに顔を見合わせて責任の擦り付け合いを始めた。子どもを傷つけることを恐れているのではない。千人はいる傍観者に囲まれて尚余裕を見せつける、最も魔法使い(ウィザード)の名に相応しい男に危害を加えようものなら、タダで済まないことは誰もが分かりきっていたからだ。
「できません!絶対に勝てません!僕たちがやられてしまう!」
「そうよ!早く逃げましょ!逆らわなければ危害は加えないはず!」
「謝ろうぜ!な?な!」
 傍観者の中からそう声が上がると、ブレヤンは傍観者らを睨み付けた。失言をした傍観者らは竦みあがり、「前言は撤回します!」と言わんばかりに激しく首を横に振っている。
「ろくでなしが!時間を稼げと言うのだ!私の全霊を以ってしての奥義なら、ウィッシュにも勝てる!見ての通り奴は油断しているからな!そもそも、今まで私の奥義を破った者がいるか?」
「いやでも…あいつに勝つことは無理だろ」
「ほう…貴様も私に切り刻まれたいと見える」
 暫く沈黙が流れたが、傍観者たちは一度おろした武器を再び掲げた。
「それでいい。よし、放て!」


 ブレヤンが命令を下すと、傍観者たちは思い思いに火炎瓶やバッド、足元で拾った小石などをウィッシュに投擲した!一部の者は恐怖を噛み殺すかのように。また一部の者は嗜虐的な快楽で我を忘れながら。生気のない青年たちの目に、今一瞬だけ光が宿ったかのようにすら思えた。

 ウィッシュの腕に抱かれた男の子は恐怖して目を瞑る。微笑みながらウィッシュは男の子の頭を胸に引き寄せる。彼はそのままの体勢で感覚を研ぎ澄ませ、自身に放たれた数々の物質に秘められた”魔力”に直接干渉した。
 すると、彼のすんでの所で火炎瓶や礫は、全て宙に浮いたままぴたりと止まる。それらはウィッシュを覆う見えない壁にくっついたかのように整然と静止しているのだ。
 その光景を前にして傍観者たちは物を投げつけるのを諦め、直立不動のまま蒼ざめた顔でウィッシュを見上げていた。先程までの威勢はどこに消えてしまったのだろうか。もしかしたら、本当にウィッシュに勝てるとさえ思っていたのかもしれない。

 「ふふふ…」とウィッシュが笑う。彼は一切姿勢を変えないまま、周囲に浮く物質を魔法で粉々にし、無数の弾丸のようにした。次の瞬間、その弾丸は全て傍観者たちの足元目掛けて一直線に飛来する!
「ヤベェヤベェヤベェ!みんな逃げろ!」
「警察!誰か警察呼んでちょうだい!軍隊でもいいわ!」
「クソ!逃げてもどうせ追いつかれる!土下座だ!俺は天使に土下座すっぞ!」
 直接的な危害は及ぼなかったが、弾幕に晒された傍観者たちは悲鳴を上げて尻餅をついたり、足に力が入らずにその場に座り込んでしまった。本当に土下座をした男までいる。
(傷つけるつもりはないんだけどねぇ…。まあ、もう少し偉そうなフリをしておこう)
 ウィッシュは傍観者たちをじっと見下ろしていた。


「―天と地を結ぶ大いなる虚空を裂け。―疾走せよ、因果絶つ暴風」
 ウィッシュが視線を逸らした隙に、彼の背後をとったブレヤンが、長い詠唱を完了させると、銀の剣から黒ずんだ魔力(の光)が放たれた!それは無数の髑髏が象られた霧のように見え、本人曰く『呑まれたもの因果を全て粉塵に還す暴風』らしい。
 しかし、ウィッシュはブレヤンを振り返ることなく感覚を研ぎ澄ませると、黒ずんだ魔力にあった”ほつれ”に干渉し、衣服にできたほつれた糸を引くが如く黒ずんだ魔力を色のない光に還す。放たれた死の魔法はウィッシュのすぐ後ろで先の方から消滅し、完全に魔力が”解放”された時には、ブレヤンは驚愕の眼差しでウィッシュを見上げていた。

「馬鹿な…!なぜだ!なぜ効かないのだ!呪文は…完璧だったはず…!」
 ブレヤンの叫びははっきりと聞き取れなかったが、ウィッシュは彼の心情を推察して、テレパシーを併用しつつ返答した。
「君は魔力を”支配”することしか考えていない。魔力は万物に宿るエネルギーだから、人一人が魔力に”絶対的な権力”を行使することなど不可能だ。だから、君の詠唱した魔法で”強制”された魔力は周囲と反発して、いとも容易く”魔力の不和”を感じとることができるんだ。その上、無理矢理固められた魔力だから、ちょっとしたはずみで”反乱”を起こし、元の姿に還ってゆく。…独裁者に押さえ付けられた国民が、ちょっとした煽りを受けて反乱を巻き起こし、元の政治体制に戻るかのように、ね」
 ウィッシュに抱かれた男の子は、彼に抱かれている限りは安全の保障が成されるという確信をもち、少しは表情に安堵がうかがえるようになった。



 ブレヤンが放った奥義は、発動さえすればどのような敵であろうと下してきた、不敗の神話を誇る必殺技だった。その神話が目の前で脆く崩れ去った途端、円になった傍観者たちの中で比較的外側に位置していた者らは一目散に逃げて行く。
「いいことを考えた!ウィッシュの方に寝返ろうぜ!そうすればボコボコにされずに済む!」
「グッドアイディア!それしかない!」
 輪の比較的中央に位置する青年らの中には、このようなことを本気で言い出す青年もいた。

 ブレヤンは、足が棒になって立ち尽くす傍観者の一人から拡声器を奪って、散り散りになった傍観者たちに警告する。
「貴様ら!逃げた者は例外なく制裁を下す!臆したなら戦え!勇気を持って敵を打ち砕け!攻撃こそ最大の防御!臆せし者は死あるのみだ!」
「いやいや、俺の目当てはあくまでブレヤンだけだよ。今ここでけりを付けておかないと、この子の故郷まで乗り込んで制裁を下してきそうで怖いからね。そうなったらこの子の母親にまで被害が加えられる、それは何としても阻止したいんだ。俺はともかく、君たちはこの子にまで物を投げつけるのも厭わなかった。性善説を信じる俺は、悪人であろうと話し合うことを信条としているけど…。命が絡んでくるような取り返しのつかない状況の場合、手段は選ばないよ。ふふふ…」
 そう言うと、ウィッシュの周囲に色のない光が生成された。時計塔からその光は、傍観者たち全員を覆うように展開する。それだけが、傍観者たちの恐怖心を煽るには十分だった。
「聞いたか!逃げることは許されん!戦え!逃げればどこまでも恐怖が付き纏ってくるぞ!」
 しかし、傍観者たちは治まるどころか、爆発的にその混乱を極めてゆく。


 突如、ブレヤンの足元目掛けて火炎瓶が投擲され、彼の足裾に火の粉が着いた。
「な…!?」
 物を投げられた方向を見ると、バットなど身近な凶器を手に持った傍観者たちが突撃してきたのだ!
「眼が覚めたぜ!俺たちは間違っていたんだ!」
「償いをさせてもらおう!」
「警察に引き渡すわよ!それとも軍隊の方がいいかしら?」
 ウィッシュよりもブレヤンの方が勝算は遥かにある。そう思った傍観者たちは、手の平を返したようにブレヤンに宣戦布告をした。

 ブレヤンは思わず先頭にいた者の手首を剣で斬りつけるが、傍観者たちはどういうわけか恐怖を忘れて次々と雪崩れ込んでくる。
「おのれ…!血迷ったか!人の陰に隠れるしか能のない屑どもが!」
 憤怒の形相を露わにしたブレヤンが叫んだ直後、後頭部をバットで叩きつけられ、「ぐああ!」と彼は悶絶する。そして彼は、味方だったはずの傍観者に取り囲まれ、執拗に全身を蹴られ始めた。その一方で、我を忘れた傍観者たちが我先にへとその場から逃げてゆく光景をウィッシュは見下ろしていた。

「ふふふ、上手くいってよかった。俺が直接手を出したらという事実を作ったら、後々かなり厄介なことになるからね。同士討ちをするよう仕向ければ、自分の手を汚さずに組織を崩壊に追い込むことが出来る。催眠術も使わないで済むと尚更良かったんだけど…でも、さすがにこれはマズイねぇ…」
 ウィッシュは片腕に抱いた男の子を恐怖させないよう、塔の出っ張りから出っ張りへと跳躍して少しずつ地上に降りる。そして彼は、一番下の出っ張りからブレヤンに攻撃し続ける傍観者たちの頭上に跳躍、そのまま色のない光を彼らに浴びせ掛けた。
 ウィッシュが地に足を着けるや否や、傍観者たちは眠気を催し、ゆっくりと腰を降ろしたり、そのままうつ伏せになったりして眠りに就いた。傍観者に囲まれていたブレヤンは、見るも痛ましい姿となっており、彼を攻撃していた傍観者と同様にぐっすりと眠っている。





「―これでもう大丈夫。眠っている人たちには全員、君を追えないように催眠をかけておいた。一応怪我も治しておいたし。逃げた人たちも…まあ、リーダーが頷かなければ、君たちの住処にカチコミを仕掛けようとも思わないだろう」
 ウィッシュは、片腕で抱える男の子の頭を撫でながらそう言った。男の子はウィッシュのジャケットを掴み、まん丸の目で彼を見上げている。
「相当ひどい目に遭っただろうけど…君は大きくなってもこの人たちみたいになっちゃダメだよ。君の中にいる臆病な君をやっつけろ、なんて無理なことは言わないからさ。だからせめて、怖くなったら俺たち大人に相談するんだよ。恥ずかしいことじゃない、俺たちの義務だから、ね」
 ウィッシュが優しく微笑むと、男の子は頬を彼の胸に押し付けてきた。


「それじゃ、お母さんを探しに行こうか」
 ウィッシュが目の前に手を突き出すと、自転車くらいの大きさの色のない光が展開、それはスカイ=ランナーと呼ばれる化学と魔法が融合した機械へと変わった。スカイ=ランナーは、キックボードからタイヤを取り除いたようなスマートなフォルムを持ち、操縦者の魔力を原動力にして自由に”空を駆け回る”機械だ。ウィッシュが愛用する機体は銀色をしている。彼が操れば、体調や周囲に漂う魔力にも左右されるが、平均して最高速度600km/hの出力で飛ぶことができる。それに伴い衝突やその他あらゆる危険性が高まる点と、操縦者にかかる負担も大きい点が短所だ。それでも魔法使いが生身で空を飛ぶよりは遥かに楽である。

 何はともあれ、ウィッシュはスカイ=ランナーに搭乗して、片腕に抱いた男の子が指を差す方向の夜空へと飛び立った。





(The end)




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